研究課題/領域番号 |
23791241
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所) |
研究代表者 |
西海 史子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 研究員 (60599596)
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キーワード | ウレアプラズマ / 絨毛膜羊膜炎 / エンドサイトーシス / エンドソーム |
研究概要 |
わが国では年間 6 万人余りが早産(妊娠 22 週から 37 週未満)で出生し、早産率は約 6% である。早産児は呼吸器障害、神経障害などの合併症を伴うことがあるが、その原因の約半数に細菌感染や、病理的な絨毛膜羊膜炎(CAM)が認められる。感染性早産は臨床的に抗菌薬の効果は低くその制御は今尚困難である。当センター流早産胎盤における Ureaplasma spp.の分離頻度は42%であり、CAM の起因微生物として最も重要な細菌の一つである(Namba et al., Ped Res, 2010)。 今回の検討でUreaplasma parvum (U. p.)は感染後、宿主細胞内で主に核周囲に局在し、感染後1週間の検討では宿主細胞内で増殖し通性細胞内寄生細菌としての性質を示した。また、U. p.は、宿主細胞にクラスリン依存性のエンドサイトーシスで取り込まれ、初期エンドソームや後期エンドソームと共局在した。エンドサイトーシス阻害剤を用いるとU. p.の細胞内侵入が抑制された。感染したHeLa細胞では、ミトコンドリア構造異常が観察され、またROSの産生も増加していた。このことは、宿主側細胞は従来常在菌とも言われていたU. p.を何らかの方法でU. p.を感知し、ROSを動員して対抗していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早産児由来のU. p.臨床分離株の細胞への侵入メカニズムについて調べた。蛍光DilラベルしたU. p.は感染後3時間で、宿主細胞内で核周囲に集積することが示された。U. p.の細胞内への取り込みは、蛍光免疫染色、阻害剤やsiRNA 等の実験により宿主細胞にクラスリン依存性のエンドサイトーシスで取り込まれていることを明らかにした。 宿主細胞内に取り込まれたU. p.の細胞内動態解析を行ったところ、初期エンドソームのマーカーであるEEA1と共局在している事が示された。さらに後期エンドソームとの局在について明らかにする為に後期エンドソームのマーカーであるrab7遺伝子のクローニングを行いEGFP-Rab7が安定発現する細胞株を樹立し、U. p.との関係について観察を行った。その結果U. p.はRab7と共局在している事が示され、さらにLAMP1とも共局在している事がしている事が明らかになった。この結果は宿主細胞内に侵入したU. p.は初期エンドソームから後期エンドソームに移動している事を示唆した。In vitro実験において、エンドサイトーシス阻害剤(chlorpromazine)はU. p.の細胞内侵入を抑制し、本感染症制御の可能性を示唆した。また、宿主細胞内に取り込まれた蛍光ラベルしていないU. p.を透過型電子顕微鏡で観察したところ、蛍光顕微鏡観察で認められた蛍光ラベルしたU. p.と同様に宿主細胞の核周囲に局在し、また細胞内小器官の観察ではミトコンドリアの膨化やクリステの構造異常が認められた。さらに、感染細胞におけるROSの産生について調べたところ、U. p.感染細胞ではROSの産生が増加している事が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
エンドサイトーシスによって宿主細胞内に取り込まれた細菌は、初期エンドソーム、後期エンドソームを経て、リソソームと融合し分解され、排除される。しかしながら、U. p.はエンドサイトーシスで取り込まれた後に少なくとも1週間の期間、宿主細胞内で増殖していた。宿主細胞は自身のミトコンドリアのエネルギーを用いてROSを産生し対抗手段を講じたが、本細胞内寄生細菌を死滅させることはできなかった。宿主細胞内における分解メカニズムの回避機構としては、1)エンドソーム膜の破壊による細胞質への脱出、2)リソソームとの融合阻害、3)リソソーム内活性酸素への抵抗性などがあげられる。また、4)細胞質に回避した細菌の一部は、オートファジー経路に再度拘束され、リソソームにより分解を受けることが知られている。そこで今後はリソソームとの融合が起こっているのか否か、蛍光免疫染色などを用いて顕微鏡観察を主として明らかにする。さらに感染細胞の電子顕微鏡観察等を通じて、菌体のエンドソームからの回避が起こっているのか否かについても詳細に解析を行う。そしてオートファジーの関連についてもEGFP-LC3の発現宿主細胞株を樹立し、蛍光ラベルしたU. p.を感染させ、その関与を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究費使用計画は細胞内に取り込まれたウレアプラズマと宿主細胞の免疫応答システムの関係について明らかにするために必要な消耗品等購入費用として35万円。 マイコプラズマ学会に参加発表する為の参加費及び旅費として7万円。人件費・謝金として5万円、その他諸経費として3万円。
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