研究課題/領域番号 |
23791242
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
氏家 英之 北海道大学, 大学病院, 助教 (60374435)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / 水疱性類天疱瘡 / 17型コラーゲン / ヒト化マウス / 疾患モデル動物 / Th1/Th2 / サイトカイン / ノックアウトマウス |
研究概要 |
1)アクティブBPマウスモデルの血清サイトカイン量の測定 ヒトCOL17発現マウスの皮膚を野生型マウス背部に植皮して免疫し、そのマウスの脾細胞を精製、Rag-2KO/COL17ヒト化マウスに静注することでアクティブBPマウスモデルを作製した。移植後、抗体産生ピークまでの期間(Day2-Day9)にモデルマウスの血清を連日採取し、各種サイトカインを測定した。脾細胞移植後Day4-5にかけて一過性のIFN-γの上昇がみられたが、予想に反しIL-4の上昇は見られなかった。以上より、アクティブBPマウスモデルの抗体産生誘導過程においてTh1優位の反応が生じている可能性が示唆された。2)IL-12KOマウスおよびIL-4KOマウスを用いた抗体産生誘導 IL-12KOマウスおよびIL-4KOマウスの脾細胞を精製しPMAとIonomycinで5時間刺激し、ELISA法で培養上清のサイトカインを測定した。IL-4KOマウスにおいてTh2サイトカインであるIL-5の産生は低いながらも見られ、IL-12KOマウスにおいてTh1サイトカインであるIFN-γの産生が十分に見られた。以上より、IL-4のKOはTh2サイトカイン全般の抑制には至らず、同様にIL-12のKOはTh1サイトカイン全般の抑制には至らないことが示された。次に、ヒトCOL17発現マウス皮膚を各KOマウスに植皮し、血清の抗ヒトCOL17 IgG抗体価を正常ヒト皮膚を用いた蛍光抗体間接法を用いて経時的に5週間測定した。植皮した野生型マウスの抗体価と比較したところ、各群間で抗体価に有意差は見られなかった。抗ヒトCOL17IgG抗体サブクラスを比較したところ、IL-4KOマウスはIgG1低値IgG2高値のTh1型の反応を示した。一方、IL-12KOマウスはIgG1高値IgG2低値のTh2型の反応を呈した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)アクティブBPマウスモデルの血清サイトカイン量の測定 アクティブBPマウスモデルの抗COL17抗体の抗体価は脾細胞移植後Day9でピークを迎えることはすでに報告済みである(Ujiie H, et al. J Immunol 2010)。従って、モデルマウスの血清をDay2-9まで連日採取しサイトカインの継時的変化をCBA法で測定したところ、前述のようにTh1型の反応がみられた。次に、アクティブBPマウスモデルのリンパ球を採取しCOL17リコンビナントタンパクで刺激したものの、刺激による増殖反応は見られなかった。植皮によって暴露されるCOL17抗原と、リコンビナントタンパク抗原の立体構造の違いなどが原因として考えられる。リンパ球のmRNAは採取済みであるので、今後、サイトカインmRNA発現量を測定する予定である。2)IL-12KOマウスおよびIL-4KOマウスを用いた抗体産生誘導 いずれのKOマウスにおいても植皮による抗体産生誘導実験を予定通り実施した。各KOマウスに誘導される抗体価が野生型マウスと差がなかった点は非常に興味深い。誘導された抗体のIgGサブクラスは予想通りIL-4KOマウスではTh1型を、IL-12KOマウスではTh2型を示していた。サブクラスが違うと補体活性化能も異なると考えられることから、免疫した各ノックアウトマウスの脾細胞を移植してモデルマウスを作製した場合にどのような表現型の差が生じるか注目される。 以上より、研究は全体を通して概ね計画通り進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、IL-12KOマウスおよびIL-4KOマウスに植皮して免疫し、その脾細胞を用いてアクティブBPマウスモデルを作製する。その表現型を、以下の方法で詳細に解析する。a)血清中の抗ヒトCOL17IgG抗体価の測定(週1回、ELISA法および間接蛍光抗体法)。b)血清IgE値の測定(適宜、ELISA法)。c)血清IgGのサブクラスの解析(適宜、間接蛍光抗体法)。d)組織学的検索(移植後5週目、HE染色およびトルイジンブルー染色)。e)皮膚への抗体沈着の確認(適宜、直接蛍光抗体法)。f)皮疹の経時的変化(週1回観察)。g)血清サイトカインの測定(適宜、CBA法あるいはELISA法)。これらを観察することで、BPにおけるサイトカインおよびT細胞サブセットの役割をin vivoで明らかにする。さらに時間的に余裕があれば、免疫したKOマウスのCD4+T細胞を精製し、免疫していない野生型マウスの脾細胞と混合してレシピエントマウスに移植し表現型を観察する予定である。我々は、免疫したマウスのCD4+T細胞が野生型マウスの脾細胞を活性化し、レシピエントマウス体内で抗COL17抗体を産生することを最近報告した(Ujiie H, et al. Clin Immunol 2012)。同様の手法を用いることで、サイトカインKOマウスのCD4+T細胞の役割をより詳細に明らかにしたいと考えている。以上の実験で得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究実施の都合上、予定していた学会に参加しなかったものがあったため、その研究費の一部を消耗品に充当し、最終的に約5万円の次年度使用額が生じた。マウスの植皮、脾細胞の精製、脾細胞移植、モデルマウスの抗体価測定、血清サイトカインの測定、HE染色、CD4+T細胞精製等に用いる試薬・実験キットの購入に45万円、実験動物の購入に20万円、実験を行うにあたり必要となるプラスチック製品(ピペットのチップ、エッペンドルフチューブなど)に10万円、情報収集および学会発表の旅費として40万円、印刷代や論文投稿料などに10万円、計約125万円の使用を計画している。
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