重症薬疹(中毒性表皮壊死症:TEN、Stevens-Johnson症候群:SJS)は眼症状などの重篤な後遺症を残すことがあり、時に致死的疾患である。血漿交換や大量免疫グロブリン療法などが試みられているが、いまだ難治症例も多くみられる。これまで申請者は、早期診断が早期治療開始に結びつくと考え研究を行ってきた。我々は血清中granulysinが発症早期に著増し、早期診断に有用であることを明らかにした。 本研究課題においてさらなる臨床における新規の診断マーカーを検索し、加えて重症度を予測できるマーカーも検索することを目的とした。 全国の医療機関に重症薬疹患者の血清の提供を呼びかけ、これまで60例以上の症例の血清を収集した。また北大病院に定期通院中の15名以上の重症薬疹患者が、例数を多く検討できる状況である。これらの薬疹症例において、薬疹原因薬剤は患者末梢血単核球(PBMC)を刺激、活性化させた。この原因薬剤刺激時に、重症薬疹において産生が亢進される、またはより優位に亢進するものを検索を行った。PBMCのmRNAを用いてDNA microarrayを施行し、重症薬疹と通常薬疹のデータを比較し、重症薬疹で優位に発現増強されるmoleculeの同定を行った。候補同定後、原因薬剤刺激したPBMCの培養上清においてタンパクレベルでの発現をELISAを用いて測定した。具体的にはsFasLや、granulysinなど細胞死誘導因子が候補として同定された。しかし今回の研究課題では新規の因子の同定にはいたらかった。 今後も検討を続け、さらに重症薬疹早期診断マーカー迅速測定キット作成も行う。
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