研究課題/領域番号 |
23791244
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
浜坂 明日香 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (60598382)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 遺伝子 / アレルギー・ぜんそく |
研究概要 |
研究代表者らは最近、マクロファージ遊走阻止因子に対するDNAワクチンがDS-NhとNC/Ngaという2つの異なるアトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚症状を改善することを示し、また、NF-κB阻害薬であるdehydroxymethylepoxyquinomicinがNC/Ngaマウスの皮膚症状を改善することを示すことに成功した。また、研究代表者の所属するグループにより、アトピー性皮膚炎患者の多くがフィラグリン遺伝子変異を有することも明らかにされた。本研究では、これら最新の知見に基づき、この両薬剤を、フィラグリン遺伝子変異を持つflaky tailという、実際のアトピー性皮膚炎の病因に最も則したモデルマウスに投与し、アトピー性皮膚炎に対する新しい治療法と予防法の開発を目指した。本年度は、flaky tailマウスを用いたアトピー性皮膚炎モデルマウスの構築を計画していたが、マウス納入の遅れが生じたため、既存のモデルマウスを用いたアトピー性皮膚炎の治療効果判定指標の構築を行った。従来、アトピー性皮膚炎の治療効果判定指標としては、臨床症状の改善度と経表皮的水分喪失量の測定などが中心であったが、電子顕微鏡を用いた皮膚超微構造の解析と角化関連タンパクの発現解析を追加し、上記2つの薬剤が皮膚炎症状を改善することを再度確認することができた。さらに新しい試みとして、次世代シークエンスを用いて角化関連タンパクのRNA発現量解析を行い、現在、データを解析中である。このように、新しい解析項目を含めた、アトピー性皮膚炎の治療効果判定指標を十分構築できたため、それらの手法を用いて、来年度は、flaky tailマウスを用いた治療実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本実験に必要不可欠のflaky tailマウスの納期に遅延が生じたため、平成23年度に当初予定していたflaky tailマウスのgenotypingと抗原経皮感作によるアトピー性皮膚炎モデルマウス作成が遅れている。そのため、DS-NhとNC/Ngaという2つのアトピーモデルマウスを用い、治療実験を施行した。アトピー性皮膚炎モデルマウスの治療効果判定に必要な項目として、以前検討した掻爬行動の回数や視診上の皮膚炎の重症度に加えて、経表皮的水分喪失量や電子顕微鏡を用いた超微構造解析、角化関連タンパクの発現解析(次世代シークエンスを用いたRNA発現解析を含む)といったバリア機能解析の評価指標の構築に重点をおいて研究を進め、治療効果評価法については、万全の体制を構築することができた。このように、治療手技、評価手技には十分習熟しているため、次年度flaky tailマウスを用いたモデル動物が完成すれば、すぐに治療と評価を行い、研究計画を遅滞なく完了することが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
flaky tailマウスが到着次第、現在、研究代表者が保有している2種類のアトピー性皮膚炎モデルマウスに加え、新たなマウスモデルを作成する。作成後、マクロファージ遊走阻止因子に対するDNAワクチンとNF-κB阻害薬であるdehydroxymethylepoxyquinomicinによる治療実験を行い、臨床的改善度(視診上の皮膚炎の重症度と掻爬行動)とバリア機能解析(経表皮的水分喪失量、角質厚、電子顕微鏡を用いた超微構造解析、角化関連タンパクの発現解析)を用い、治療効果を判定する予定である。得られたデータはすべて統計学的に解析し、両薬剤のアトピー性皮膚炎に対する有用性について考察を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に計上していたflaky tailマウスの納入費が、納期の遅れにより平成24年度に計上される予定である。また、物品費として、遺伝子解析関連試薬、抗体(各種角化関連タンパクに対する)、電子顕微鏡用試薬、動物飼育費、薬剤費などを計上している。研究成果発表並びに情報収集のため、学会参加の旅費も必要である。
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