研究代表者らは最近、マクロファージ遊走阻止因子に対するDNAワクチンがDS-NhとNC/Ngaという2つの異なるアトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚症状を改善することを示し、また、NF-κB阻害薬であるdehydroxymethylepoxyquinomicinがNC/Ngaマウスの皮膚症状を改善することを示すことに成功した。また、研究代表者の所属するグループにより、アトピー性皮膚炎患者の多くがフィラグリン遺伝子変異を有することも明らかにされた。本研究では、これら最新の知見に基づき、この両薬剤を、フィラグリン遺伝子変異を持つflaky tailという、実際のアトピー性皮膚炎の病因に最も則したモデルマウスに投与し、アトピー性皮膚炎に対する新しい治療法と予防法の開発を目指した。昨年度は、既存のモデルマウスを用いてアトピー性皮膚炎の治療効果判定指標の構築を行った。従来、アトピー性皮膚炎の治療効果判定指標としては、臨床症状の改善度と経表皮的水分喪失量の測定などが中心であったが、電子顕微鏡を用いた皮膚超微構造の解析と角化関連タンパクの発現解析を追加し、上記2つの薬剤が皮膚炎症状を改善することを再度確認することができた。今年度は、flaky tailマウスを用いたアトピー性皮膚炎モデルマウスの構築を行った。既報告の方法にならい、ダニ抗原を反復塗布し、皮膚炎症状を誘発した。このマウスを用いて上記2薬剤で治療したところ、症状が改善した。
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