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2011 年度 実施状況報告書

アトピー性皮膚炎とフィラグリン遺伝子のサイズ多型の関連の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23791245
研究機関北海道大学

研究代表者

乃村 俊史  北海道大学, 大学病院, 助教 (50399911)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード遺伝子
研究概要

フィラグリン遺伝子は、10-12個のほぼ相同な972塩基の繰り返し配列から成り、繰り返し配列の数が個体により異なるという特徴を持つため、表皮において、個体により異なった大きさのプロフィラグリンが産生されることになり、同じアトピー性皮膚炎でもフィラグリンを多く持つ患者と少なく持つ患者が存在することになる。この繰り返し配列の数の違いによるフィラグリンの発現量の違いは表皮バリア機能やアトピーの重症度に影響を与えると推測されるが、これまで繰り返し配列の個数とアトピーの重症度との関係は不明であった。本研究では、両者の関係を明らかにすることを目指す。今年度はまずアトピー性皮膚炎患者を新規に約50名リクルートし、それらの患者DNAを用いてフィラグリン遺伝子変異解析を行った。これまでの変異検索結果とあわせると、アトピー患者約250名のうち、約30%弱がフィラグリン遺伝子変異を有することが明らかになった。次に、これら約250名のアトピー患者についてフィラグリン遺伝子の繰り返し配列の数について検討を行った。フィラグリン遺伝子は、10-12個の繰り返し配列を持つが、それはrepeat 8とrepeat 10をそれぞれ2個ずつ持つ個体がいることに起因する。フィラグリン遺伝子のエクソン3の全長を増幅するプライマーを作成し、PCR法にて増幅を試みたが、12kb以上という極めて大きなPCR産物の増幅のためか、250例の検体のうち、エクソン3全長を増幅できたのは10%にも満たなかった。そこで、repeat7からrepeat10をすべて増幅できるようなプライマーを作成し、PCRを施行したところ、大部分の症例で、増幅することができ、フィラグリン遺伝子のサイズ決定を概ね終了することができた。その精度を確かめるため、現在、数サンプルを次世代シークエンスで解析し、フィラグリン遺伝子全長のサイズ決定を試行中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

フィラグリン遺伝子のエクソン3の全長を増幅するPCRでの増幅には失敗したが、repeat7からrepeat10を増幅するPCRでは、大部分の症例で増幅することができ、フィラグリン遺伝子のサイズ決定を概ね終了することができたため、実験計画は概ね順調に進展している。しかし、サイズの大きなPCR産物であるため、その精度を慎重に検討する必要があり、現在、その精度を確かめるため、数サンプルを次世代シークエンスで解析し、フィラグリン遺伝子全長のサイズ決定を試行中である。また、フィラグリン遺伝子多型とフィラグリン遺伝子のサイズとの相関も明らかになりつつあり、例えば、S2889Xという日本人で最も多く見られるフィラグリン遺伝子変異を持つアレルはrepeat8を二個持つことが明らかになっており、これらの知見も組み合わせながら、今回得られたデータの精度を上げていく予定である。

今後の研究の推進方策

PCRと次世代シークエンスの結果に基づき、サイズ多型についてのデータ解析を行う。その後、フィラグリン遺伝子サイズ多型のデータを、フィラグリン遺伝子変異の有無、アトピー性皮膚炎の重症度と絡めて、統計学的な解析を行う。これにより、フィラグリン遺伝子変異の有無だけでは正確に評価することの難しかった、フィラグリンの発現量とアトピー性皮膚炎の重症度との相関が明らかになることが期待される。また、アトピーの他の重要な表現型である、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の発症率についてもフィラグリンの発現量の観点から、統計学的に解析していく予定である。さらに、アトピー性皮膚炎を発症していない乳児のサンプルを集め、フィラグリン遺伝子のサイズ多型と遺伝子変異がアトピー性皮膚炎の発症率にどのような影響を与えるのかについても検討を進める予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は、さらなるサンプルの収集(アトピー性皮膚炎、コントロール、乳児サンプル)を行うため、DNAの抽出キットを多数購入する。また、次世代シークエンスの解析結果次第では、さらなるサンプル解析を行う必要が生じるため、次世代シークエンスの委託費が必要になる可能性がある。その他、消耗品として、遺伝子解析関連試薬の購入と、研究成果発表並びに情報収集のため、学会参加の旅費も必要である。なお、約70万円の繰越は約60万円の委託研究費(次世代シークエンス解析)の決済が次年度に持ち越されたためで、総額では概ね当初の計画通り使用した。「その他」の使用額超過は同解析を想定より多く要したためである。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Prevalent and rare filaggrin gene mutations in the Japanese population.2011

    • 著者名/発表者名
      Ohguchi Y, Nomura T, Miyamura Y, Ono N, Kosuge H, Okamoto H, McLean W, Akiyama M, Shimizu H
    • 学会等名
      The 36th Annual Meeting of the Japanese Society for Investigative Dermatology
    • 発表場所
      国立国際京都会館(京都)
    • 年月日
      2011年12月9日
  • [学会発表] Filaggrin as a novel therapeutic target for atopic dermatitis.2011

    • 著者名/発表者名
      乃村俊史
    • 学会等名
      The 11th Annual Meeting of Korean Atopic Dermatitis Association(招待講演)
    • 発表場所
      Seoul National University(ソウル)
    • 年月日
      2011年11月12日
  • [学会発表] Recent advances in skin barrier research.2011

    • 著者名/発表者名
      乃村俊史
    • 学会等名
      2011 Regular Seminar of Research Institute for Biomedical and Pharmaceutical Sciences: Molecular Approach in Skin Diseases and Allergy(招待講演)
    • 発表場所
      Chung-Ang University(ソウル)
    • 年月日
      2011年11月11日

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公開日: 2013-07-10  

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