研究課題
本研究は乾癬、創傷表皮などにおいてその基底層で発現亢進がみられるポドプラニン分子の表皮角化細胞における機能を明らかとし、乾癬あるいは創傷治療のターゲットとしてのポドプラニン分子の可能性を探ることを目的としている。これまでに、アデノウィルスベクターを用いた過剰発現系、およびshRNA導入による発現抑制系の実験結果から、表皮角化細胞におけるポドプラニン分子の機能として、以下の事項が明らかとなった。ポドプラニン分子は表皮角化細胞の接着能を抑制することにより、分化マーカーであるインボルクリンの発現亢進に関与する。また、ポドプラニン分子の過剰発現により、コロニー形成能が低下するのに伴い、3次元培養表皮の形成も抑制されることから、ポドプラニン分子が表皮基底層の細胞機能に関与することが示唆された。このような接着能、自己複製能の制御については、b1-インテグリンの発現調節に加え、b1-インテグリンの活性化制御機構も存在すると考えられる結果が得られている。すなわち、ポドプラニン分子により、b1-インテグリンの発現量は低下するが、同時にECMと結合した活性型b1-インテグリン量も低下しており、ポドプラニン分子が増殖表皮において、基底層から有棘層への角化細胞の移行に関与している可能性が示唆される。乾癬表皮の様な増殖が亢進した状態にある表皮においては、増殖プールの増加とともに増殖細胞の分化過程への積極的な移行が同時に生じうる必要があり、以上示してきたポドプラニン分子の表皮角化細胞における機能と合致する所見と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
アデノウィルスベクターを用いた表皮角化細胞における機能解析はおおよそ順調に進んでいる。この検討の過程で、ポドプラニン分子のb1-インテグリンの活性制御といった新規の機能も明らかとなってきており、この機能解析にも着手しているところである。
培養細胞を用いた解析においては、おもにb1-インテグリンの活性制御機構について他の分子との関連性を含め検討したい。現時点でいくつかの分子の候補が挙がっており、それぞれ発現ベクターを作成中で、分子間の結合などについても免疫沈降法などを用いて解析を加えたい。また、乾癬患者血液中のポドプラニン分子量などの測定も行い、検出できれば、乾癬の活動性などとの関連性につても検討したい。
上記の研究目的を達成するため、特にタグを標的にした免疫沈降キットなどの消耗品の購入を検討している。
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