研究課題
我々はDNA修復に働くSIRT6の皮膚における機能について着目した。皮膚表皮細胞においてのみSIRT6が過剰発現するトランスジェニック(TG)マウスを準備し、SIRT6-TGの背部を剃毛後、UVBを照射、照射後24~48時間での皮膚障害を調べるため、皮膚生検を行った。得られた検体で、サンバーン細胞数の計数したが、SIRT6を過剰に発現させても、サンバーン細胞の抑制は認めなかった。一方、UVBによる急性期紅斑の客観的評価法として、Dermaspectrometerを使用し、照射48時間後のErythema Indexを測定したところ、SIRT6-TGでは有意に紅斑形成が抑制されていた。以上より、SIRT6発現増加によって、表皮細胞に対するUVB傷害は抑制されないが、紅斑形成は抑制されることが明らかとなった。SIRT6過剰発現した表皮角化細胞と、線維芽細胞、メラノサイト、リンパ球等炎症細胞によるinteractionがある可能性を考えた。次にUVB照射による長期的な皮膚腫瘍発生の差異について検討を行った。野生型マウスと、SIRT6-TGマウスに対して、週3回、21週間に渡りUVBを照射した。その結果、野生型マウスでは照射部の背部に皮膚びらんを認めたが、SIRT6-TGマウスではびらん形成が見られなかった。このことから、SIRT6の皮膚での発現増加が、UVBによる慢性皮膚障害であるびらんあるいは潰瘍の形成を抑制したことが示唆された。以上の結果より、SIRT6-TGマウスでは皮膚でのSIRT6の発現増加によって、損傷されたDNAの修復がスムーズに行われたものと推察した。今回の長期的UVB照射においては、皮膚有棘細胞癌をはじめとした皮膚腫瘍発生に関しては野生型とTG型との間に有意差を認めず、皮膚の腫瘍発生という点からはSIRT6の関与は証明されなかった。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)
J Dermatol Case Rep.
巻: 6 ページ: 40-42
doi: 10.3315/jdcr.2012.1096.
Journal of Cosmetics, Dermatological Sciences and Applications
巻: 2 ページ: 8-10
doi:10.4236/jcdsa.2012.21002
巻: 2 ページ: 263-264
doi:10.4236/jcdsa.2012.24049