研究課題/領域番号 |
23791249
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤村 卓 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50396496)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 骨髄由来抑制細胞(MDSC) / マクロファージ / 制御性T細胞 / 悪性黒色腫 / 免疫寛容 / 皮膚悪性腫瘍 |
研究概要 |
抑制型マクロファージであるMDSCはその存在下に制御性T細胞を誘導し、腫瘍内で免疫寛容を形成することが知られている。そのため、ret melanomaモデルにおいて、腫瘍内に浸潤しているMDSCは高頻度に抑制型のco-stimulate moleculeであるB7H homologを発現していることを確認し、この中のB7H1を介してMDSCがT細胞の増殖を抑制していることを確認した。更に制御性T細胞のMDSCのフェノタイプに与える影響を、マウス悪性黒色腫モデルを用いて、検討した。その結果、ret melanomaモデルにおいては、制御性T細胞を除去すると、MDSC上のB7H homologの減弱が生じることを証明した(2012. Fujimura et al. JID)。更にこれらのMDSCの変化がMDSCのT細胞増殖抑制能、抑制型サイトカインであるIL-10の産生能に関わることも確認した。また、異なるマウスのB16 melanomaモデルにおいてもB7H1の発現を確認し、この発現が現在臨床で使用されている種々の薬剤の影響を受けることを確認しつつある。 これと平行して臨床検体を用いて皮膚悪性腫瘍全般における抑制型マクロファージの存在と疾患の病態に関する研究を行い、Merkel細胞癌においてCD163陽性抑制型マクロファージが疾患予後に関与する可能性を示唆した(2012 Hidaka et al. Acta DermatoVenereologica)。現在臨床研究においては、悪性黒色腫、血管肉腫、有棘細胞癌等多岐にわたり解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の通り、現在当プロジェクトは、第一段階として基礎論文としてインパクトファクター6点台と3点台の国際誌に採用される他、臨床応用を推進するため、臨床論文としても国際誌に二本採用されている。現在投稿中の論文で再実験が必要なものの、当初の予定を上回り、国際誌への採用が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
MDSCの抑制機能の解析に関しては、悪性黒色腫の汎用マウスモデルであるB16を用いて現在臨床で使用されている薬剤(ダカルバジン、インターフェロン、イミキモド等)のMDSCに与える影響の解析を進める。更に、ヒトの皮膚腫瘍全般において、この抑制型マクロファージの解析を免疫染色とフローサイトメトリーによる解析を中心に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
B16マウス黒色腫モデルにおいてMDSCの抑制能に影響を与えることが既に他の癌種で報告されている、ビスフォスフォネートの腫瘍抑制能の検討を行う。また、これまで臨床において悪性黒色腫の治療に用いられてきた薬剤のMDSCに与えるメカニズムの解析をB16モデルで行う。さらに、これら薬剤で誘導されてきたMDSCの抑制機能の差異をT細胞増殖アッセイやELISA法によりサイトカイン産生能の検討を行う。更にヒトの検体においてMDSCの検討を行い、臨床研究への基礎データとする。具体的には悪性黒色腫ステージ2、3、4の患者の末梢血からbuffy coatを回収し、フローサイトメトリーを用いることにより、ヒトのMDSCとして知られているCD11b+CD33+CD14-HLA-DR-細胞の存在と比率を確認する。次にこの細胞表面のB7-H1、B7-H2、B7-H3、B7-H4の発現を検討する。また、これらの患者の原発巣のパラフィン組織より、免疫染色を行い、浸潤細胞内のMDSCの比率およびB7-horming moleculeを発現しているMDSCの存在を検討する。これらのマーカーと黒色患者のステージとの相関性を統計学的に解析する。
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