金沢大学皮膚科で外科的治療を行った有棘細胞がんの組織を用い、TWIST、Snail、E-cadherin、Human papilloma virus (HPV) の免疫染色を施行し、浸潤がん、表皮内がん、転移リンパ節について検討した。浸潤がんでは、TWIST、Snailで細胞膜および細胞質での発現がみられた。E-cadherinは、細胞膜に染色され、浸潤している腫瘍細胞も染色されたが、同一切片内でも染色程度にばらつきがあった。HPVの発現はみとめなかった。HPVの染色については、従来ウイルス感染と発がんとの関連が示唆されているボーエン病(表皮内がん)から浸潤した有棘細胞がん(ボーエン癌)についても検討したが、染色されなかった。表皮内癌では、TWIST、Snail、E-cadherinともに細胞膜と細胞質において発現がみられ、HPVの発現はみられなかった。表皮内癌のE-cadherinの発現は全例でみとめたが、正常表皮にもE-cadherinは細胞膜に均一に染色された。転移リンパ節でも同様に検討したが、TWISTとSnailが細胞膜および細胞質で発現が亢進していた。E-cadherinの発現もみとめたが、浸潤がんの症例と同様に染色性にばらつきがあった。HPVの発現はなかった。蛋白レベルの発現の検討をまとめると、有棘細胞がんにおいてTWISTとSnailの発現は亢進している。E-cadherinは浸潤がんで一部発現の減弱がみられた。これは転移リンパ節においても同様の傾向だった。蛋白レベルではHPVと有棘細胞がんとの間に関連性はなかった。 今後、TWISTとSnailおよびHPVについてはPCRを用いてRNAレベルの発現を検討する。E-cadherinについては一部染色性の減弱した症例での臨床経過を追跡し、転移および予後との関連がないか検討する。
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