研究課題/領域番号 |
23791260
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松下 貴史 金沢大学, 医学系, 助教 (60432126)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 制御性B細胞 / IL-10 / 自己免疫疾患 |
研究概要 |
本年度はB細胞特異的PI3K欠損マウスの作成に取り組んだ。これまでの研究によりB細胞におけるCD19からのシグナル伝達(特にPI3Kシグナル)が制御性B細胞の分化・増殖に重要であることが推測されている。そこで、PI3Kシグナルによる制御性B細胞の制御機構についてin vitroおよび遺伝子欠損マウスを用いて検討した。野生型マウスの脾臓由来B細胞を分離し、PI3Kシグナルを刺激ないし阻害する試薬を添加しin vitroで培養しIL-10産生B細胞の頻度をフローサイトメトリーで解析した。PTENはPI3Kの強力な抑制因子であるので、PTEN阻害薬[bpV(pic)]はPI3K刺激薬となる。PI3K阻害薬としてはLY294002、wortmannin、ZSTK474などを使用した。PTEN欠損マウスは胚性致死である。よってPTEN欠損マウスを使った実験を行うにはCre-loxPシステムを用いて、コンディショナルな条件でのノックアウトが必要である。実際には、CD19Cre+/+マウスとPTENloxP/loxPマウスを掛け合わせCD19Cre+/-PTENloxP/loxP(B細胞特異的PTEN欠損)マウスを作成した。 結果は、PI3K阻害薬はin vitroで制御性B細胞を減少させた。一方PI3K刺激薬(PTEN阻害薬)は制御性B細胞を変化させなかった。CD19Cre+/-PTENloxP/loxP(B細胞特異的PTEN欠損)マウスの解析では、コントロールマウスを比較して有意に制御性B細胞の増加がみられた。 これは、制御性B細胞の制御機構においてPI3Kシグナルが非常に重要であることが示唆された。今後、さらにPI3Kシグナルによる制御性B細胞の制御機構を解明することにより炎症性疾患や自己免疫疾患に対する新規治療法の開発につながる疑義のあるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画は予定通り進んでいる。引き続き次年度の計画を遂行する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに確立したCD19Cre+/-PTENloxP/loxP(制御性B細胞著増)マウスを使用し、CHS、EAEにおける制御性B細胞の役割の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度はマウスの成育がおくれたため、研究費の未使用額が生じた。次年度は、マウスの成育も順調であるため以下のような研究を予定している。 CD19Cre+/-PTENloxP/loxPマウスとコントロールマウスにおいて、DNFBを腹部に塗布(感作)、5日後に耳介に再塗布(チャレンジ)し,耳介の厚さを測定することにより、接触過敏反応を評価する。制御性B細胞が著増していると予想されるCD19Cre+/-PTENloxP/loxPマウスでは、接触過敏反応が抑制されることが期待される。また、制御性B細胞がどのように接触過敏反応を制御しているかを解明するため、所属リンパ節や皮膚組織での病理組織学的解析や組織切片の浸潤細胞のプロフィールを、免疫染色やreal-time PCRにより解析する。さらに、所属リンパ節や皮膚組織への制御性B細胞の浸潤をフローサイトメトリーを用いて解析する予定である。野生型マウスの制御性B細胞の頻度は極少数(約2%)であるが、CD19Cre+/-PTENloxP/loxPマウスでは制御性B細胞が著増しているので、制御性B細胞が顕性化し解析しやすい。以上より接触過敏反応おける制御性B細胞の役割を解明する。
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