本研究の目的は、抗腫瘍免疫反応に重大な役割をもつサイトカイン、IFN-gamma刺激によってメラノーマ細胞に発現し、メラノーマ反応性T cellを直接抑制する未知の分子を網羅的遺伝子発現解析によって同定し、それらの生理的作用の強さをヒトのメラノーマ特異的T cellを用いてin vitroで定量的に評価することである。将来的にはそれらを阻害する抗体を作成してメラノーマへの免疫療法の効果を増強するのに利用する。 昨年度にIFN-gamma処理によりT cell活性化を抑制する因子が誘導されるメラノーマ細胞株群と誘導されない細胞株群の遺伝子発現変化の違いをDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析、比較し免疫抑制分子の候補を約5個同定した。平成24年度は同定した候補遺伝子をそれぞれクローニングしその遺伝子を発現しないメラノーマに強制発現させて、各候補分子の腫瘍特異的T cellへの抑制効果を評価した。その結果、5つの候補分子のうち2つに、in vitroでのコンスタントなT cell抑制機能が確認された。またそれぞれに関して抑制メカニズムの詳細の検討も開始した。一つはメラノーマ細胞内にシグナルを入れて他の免疫抑制因子を誘導しており、もう一つは直接T cellと結合して抑制シグナルを入れていることが示唆された。この結果に関して現在論文作成中である。またこの結果を臨床応用に向けて更に発展させる研究を平成25年度科学研究費助成事業(基盤C)の助成を受けて実施予定である。 2012年度にこの結果を国内の学会で2度、海外の学会で一度、発表した。
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