ケラチン5は表皮や食道といった上皮細胞に発現する細胞骨格蛋白であるが、リンパ組織では胸腺上皮細胞で発現がみられるものの、リンパ球での発現するとの報告はない。我々はケラチン5を発現する新規リンパ球系細胞を発見し、それらを解析することでその特徴を明らかにした。この細胞は、骨髄でのB細胞の分化過程であるCommon lymphoid precursorの段階で、一過性にケラチン5を発現し、末梢のリンパ組織では発現していないことがわかった。またこの細胞を単離したものを用いて、抗原提示能を検討したところ、形質細胞様樹状細胞に匹敵する高い抗原提示能力を持っていることがわかった。さらに、この細胞は、当初未熟B細胞様の細胞表面抗原の発現パターンをとると考えていたが、その後の解析で、IgM+IgDlowCD23-CD43+CD19+CD93-であり、Follicular B細胞やMarginal zone B細胞ではなく、B-1細胞に分化することがわかった。B-1細胞は胸腔や腹腔に多く存在する細胞で、IgMを自然分泌することが知られる。一過性にケラチン5を発現するこの細胞は、通常のB-1細胞よりも、よりIgMを自然分泌することがわかった。以上より、一過性にケラチン5を発現するB-1細胞はIgM産生能、抗原提示能に優れた免疫細胞であることがわかった。
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