研究課題/領域番号 |
23791271
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
中井 浩三 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (40363204)
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キーワード | 国際研究者交流 |
研究概要 |
表皮の細胞間接着が皮膚バリア機構の一要素と考え、フィラグリンが細胞間接着因子であるE-CadherinとOccludin、そして表皮増殖因子受容体(EGFR)の発現に及ぼす影響を調べた。また、同じく角層周辺帯を形成するロリクリンや表皮角化に影響する酸化ストレス反応因子であるSIRT1の発現も調べた。バッククロスしていないフレーキーテイルマウスの皮膚のフィラグリン、E-Cadherin、Occludin、ロリクリン、EGFR、SIRT1の発現はC57BL/6マウスに較べて低下していた。抗酸化剤NAC飲水によりバッククロスしていないフレーキーテイルマウスの皮膚のEGFR、E-Cadherin、Occludin、SIRT1の発現は増加した。57BL/6マウスでバッククロスしたフレーキーテイルマウスと57BL/6マウスの皮膚で上記タンパクの発現を較べた。バッククロスしたフレーキーテイルマウスでもバッククロスしていないフレーキーテイルマウスと同様の結果を得ることができた。HaCaT細胞のフィラグリン発現とロリクリン発現をsiRNAでノックアウトした。また、SIRT1阻害剤であるsirtinolの影響も検討した。HaCaT細胞を重層培養して同様の実験を行った。フレーキーテイルマウスの皮膚で得られた結果と同様、フィラグリンをノックアウトするとHaCaT細胞のロリクリン発現は低下した。しかし、逆にロリクリンをノックアウトしてもフィラグリン発現に変化はみられなかった。また、HaCaT細胞のフィラグリンとロリクリンのどちらをノックアウトしてもEGFR、E-Cadherin、Occludin、SIRT1の発現が低下した。SirtinolはHaCaT細胞のEGFR、E-Cadherin、Occludinの発現を抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
週齢、性別ごとに血清、尿、皮膚組織を生化学的、免疫組織学的、分子生物学的にできるだけ多面的に分析したため。研究が正確になり多くの情報が得られた。また、アセチルシステインを給水ボトルにて飲水させることは治療への応用に現実的であった。研究計画を遂行するための研究体制が整っていた:バリア機能の評価については臨床研究でアトピー性皮膚炎患者の経皮水分喪失量(TEWL)を日常測定している香川大学皮膚科の窪田泰夫教授の協力、助言を仰げた。酸化ストレス状態の評価については、香川大学生理学の小坂博昭教授より、それぞれの酸化ストレスマーカーの測定の協力、意義と関連性について助言を仰げた。炎症状態の評価については、香川大学生理学の五十嵐淳介准教授より、協力、意義と関連性について助言を仰げた。皮膚組織の評価については香川大学皮膚科の米田耕造准教授の電子顕微鏡の協力を得た。
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今後の研究の推進方策 |
1)酸化ストレス状態の評価:それぞれのマウスの尿・血清・皮膚組織中のDNA酸化損傷(8-OHdG)、脂質酸化損傷(ヘキサノイルリジン、4-HNE、マロンジアルデヒド、LPO)、タンパク質酸化損傷(ジブロモチロシン、ジチロシン、カルボニル化タンパク質)、抗酸化物質(スーパーオキサイドジスムターゼ、グルタチオン、ビタミンC)、一酸化窒素代謝産物(硝酸、亜硝酸、ニトロチロシン)を日本老化制御研究所より市販されているキットにて測定しノックアウトマウスでは酸化ストレスが増加していることを明らかにする。 2)炎症状態の評価:アトピー性皮膚炎患者では血清免疫グロブリンIg-Eや血清LDHの上昇、また近年では血清組織中のサイトカインIL-6やIL-17の上昇、血管増殖因子VEGFの上昇、細胞内情報伝達因子MAPKの異常が報告されている。Ig-E、 LDH、IL-6、IL-17、VEGF、MAPKはフナコシ株式会社より市販されているELISAキット、または抗体を用いて、それぞれのマウスの血清、組織中におけるこれらの因子を測定し、ノックアウトマウスの炎症状態を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進に使用する。
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