研究課題/領域番号 |
23791274
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
永井 彩子 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(特定教員) (90420562)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Sebosomes / sebocytes |
研究概要 |
皮膚の脂腺細胞は、皮脂としてスクアレンなどの脂質を合成し、皮膚表面に分泌する。我々は、ラットなどの脂腺細胞を培養したところ、脂質を含む膜小胞を活発に生成・分泌することを発見して、同小胞を「Sebosomes」と命名した(Endocrinology 2005年)。Sebosomesはリサイクリングエンドゾーム膜、早期および後期エンドゾーム膜、リソゾーム膜、脂質ラフトなどの膜成分を含む新規複合膜系であった。また、Sebosomesは保湿機能に加え、スクアレンやヒストンを濃縮しており、抗菌活性を持つことが示唆された。今回、分泌後のSebosomesの脂腺細胞外での機能を検討する目的で、あらかじめ蛍光標識したSebosomesを用いて、Sebosomesから周辺細胞画分への標識分子の局在化を検討した。方法として、EGF添加培地で培養維持した脂腺細胞の培養液に、蛍光脂肪酸 (FA)、蛍光コレステロール (Chol)、 蛍光標識chorela toxin subunit B (CT) 、DiI をそれぞれ添加した。その後、生成された標識分子を持つSebosomesを単離した。これをヒト角化株細胞、HaCaT細胞の培養液に添加し、細胞内への蛍光分子の移行を観察した。その結果、各種蛍光標識分子は、分泌されたSebosomes画分に局在し、これらはHaCaT細胞の培養液中に添加すると、HaCaT細胞に取り込まれ、細胞内へと取り込まれた。FA、Chol、CT、DiIはいずれも、主に核周囲の脂肪滴に移行して局在した。以上の結果、Sebosomesは、種々の細胞膜系を含有する複合膜系である事が示唆された。また、脂腺細胞から脂質などの分子を、HaCaT細胞などの周辺細胞へと供給および移送する機能が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災の影響で、予算配分が大幅に遅れたため、申請時に予定していた機器の購入経費が、変動して不足し、購入できなくなった。しかし、本研究に必須の機器であったので、仕様の変更を余儀なくされた。その結果、ほぼ同等の機能が得られたが、仕様変更に時間がかかり、納期も遅れた。現在予定していた研究を急いで進めている。また、本大学医学部の建物全体に耐震などの工事が加わり、粉塵や振動等、実験に支障が出た。さらに、年度末には、使用中の実験室を移動しなければならなくなり、機器類の移動・設置・調整等にも時間を要し、研究に遅れを生じた。
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今後の研究の推進方策 |
震災の影響で機器等の購入時期が遅れ、当時、稼働可能な機器運用の状況から、H24年度に予定していた「セボゾームの周辺細胞への物質輸送機能の解明」と「セボゾ-ム分泌機構を促進・阻害する因子の探索」を本年度に行った。H24年度には、H24年度予定の実験計画に加え、H23年度に予定していた「蛍光オルガネラトレーサー、蛍光脂質トレーサー、蛍光蛋白質融合蛋白質によるセボゾームへの蛋白質局在化のタイムラプス観察」と「培養脂腺細胞での細胞内カルシウム濃度変化の測定と、セボゾーム生成機構の検討」も続けて行い、検討をする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で使用している細胞は極めて特異性の高い細胞で、培養に用いる牛胎児血清の影響を強く受け、メーカーやロットで培養細胞の性質が変わることが多い。このため、慎重な選択が必要であり、H23年度でのロットチェックの中に充分適合するものが得られず、購入が遅れた。これに加えて、震災の影響を受けた大学の耐震工事の影響により、機器類の納品が遅れ、研究に遅れが生じ、繰り越し経費が発生した。H23年度に使用を予定していたが、繰り越した経費は、次年度の牛胎児血清等の細胞培養用の試薬や遺伝子解析・蛍光観察用試薬の購入費に充てる予定である。
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