研究概要 |
脂腺細胞は、スクアレンなどの脂質を合成し、皮脂として皮膚表面に分泌する。我々は、ラットの脂腺細胞を培養したところ、脂質を含む膜小胞を活発に生成・分泌することを発見して、同膜小胞を「Sebosomes」と命名した(Endocrinology 2005年)。Sebosomesはリサイクリングおよび、早期-後期エンドゾーム、リソゾーム、脂質ラフトなどを含有する新型の複合膜系であった。また、Sebosomesはスクアレンやヒストンを濃縮しており、保湿機能に加え、抗菌活性が示唆された。今回、Sebosomesへの蛋白質輸送を検討するために、Sebosomesへの新規合成蛋白質と各種ヒストン蛋白質の分布を検討した。 方法としては、脂腺細胞はEGF添加DMEMで培養維持した。ヒストンの分布は細胞を固定後、蛍光免疫染色法で検出した。新規合成蛋白質の代謝ラベルにはClick-iT(R) AHA (L-azidohomoalaine) (Life Technologies)を用いた。 その結果、抗ヒストン H1, H2B, H3, H4抗体により、それぞれ、脂腺細胞の核及び、Sebosomesが染色された。細胞内にSebosomesが生成中および生成された後にClick-iT(R) AHAでラベルされた新規合成蛋白質の蛍光シグナルは、脂腺細胞とSebosomesに検出された。 これまでのMS解析などの研究結果から、Sebosomesには数種類のヒストン蛋白質が含有されていることが示唆されていたが、今回の結果はそれを裏付けるものになった。Sebosomes生成中も、脂腺細胞は蛋白合成を盛んに行っており、新しく合成された蛋白質もSebosomesで検出されたことから、単なる排出機構よりも、抗菌物質など周辺環境に積極的に分泌する機構が示唆された。
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