【目的】ロイコトリエンB4受容体(BLT)は、BLT1とBLT2の2種類の受容体が存在することが知られている。BLT1は主に白血球の中の好中球、単球に発現し、これらの細胞に対し強い遊走活性・活性酸素産生能を有しており、炎症反応形成に深く関与している。一方で、BLT2に関しては、ヒトにおいて肝臓、膵臓をはじめとし、体内の種々の臓器、細胞に発現していることがわかっているものの、その機能については明らかになっていない。そこで、我々はアトピー性皮膚炎でも炎症形成に強く関与している表皮細胞(ケラチノサイト)に対するBLT2の作用について検討した。 【方法】ヒトケラチノサイトにおけるBLT2発現を確認し、12-HHT(BLT2 作動薬)を用いて、経上皮電気抵抗(TER)測定、FITC-dextran透過性試験法にて細胞間の透過性を評価し、BLT2の細胞間のバリア機能に与える作用を検討した。 【結果】ヒトケラチノサイトにおいてBLT1、BLT2の発現を確認した。BLT2 作動薬刺激群で、コントロール群、BLT1 作動薬刺激群に比して有意に電気抵抗の上昇、FITC-dextranの漏出低下が認められた。このことから、BLT2 作動薬は、ヒトケラチノサイトにおけるバリア機能増強作用を有すると考えられる。以上の結果から、表皮におけるバリア機能異常が関与しているアトピー性皮膚炎に対し、BLT2 作動薬の外用などによりバリア機能の改善、ひいてはアトピー性皮膚炎の症状改善に応用できる可能性が示唆された。
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