研究課題/領域番号 |
23791276
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中原 剛士 九州大学, 大学病院, 助教 (40529848)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / 樹状細胞 / 腫瘍免疫 |
研究概要 |
皮膚悪性黒色腫は発育の過程で周囲の免疫系に様々な影響を与えると考えられる。本研究は皮膚悪性黒色腫局所の微小環境が樹状細胞を介した免疫反応に与える影響の詳細な解析を行い、免疫療法の治療効果向上へと応用することを目的としている。そのために最初に、計画に沿ってB16マウス悪性黒色腫をマトリゲルに溶かしてマウス皮膚に接種し、腫瘍に浸潤する樹状細胞のサブセットを非常に早期から経時的にフローサイトメトリーで解析した。すると腫瘍接種ごく初期には非常に多くの割合の樹状細胞が腫瘍内に浸潤しており、その割合は腫瘍の増大とともに徐々に減少していくことがわかった。しかし浸潤する樹状細胞の数は逆に、腫瘍の増大とともに増加した。また、通常の二次リンパ組織では見られない樹状細胞のサブセットも見られた。所属リンパ節と非所属リンパ節における樹状細胞の割合は予想に反して有意な差は見られなかった。活性化マーカーに関しては、腫瘍に浸潤している樹状細胞は表面マーカーで見るとリンパ節の樹状細胞より活性化した状態であった。 また、樹状細胞の機能を見るために腫瘍浸潤細胞をCD11c磁気ビーズにて分離できるかどうかの基礎実験を行なったところ、高い純度で分離できることが確認された。 このように、腫瘍発育早期には予想以上に多くの腫瘍浸潤樹状細胞が見られたため、これらの更なる詳しい表面マーカーの解析、機能の解析は抗腫瘍免疫を高める手がかりになりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画としては、1)腫瘍浸潤樹状細胞の経時的なフローサイトメトリーでの解析、2)腫瘍浸潤樹状細胞を分離しての機能の解析、であった。腫瘍に浸潤している樹状細胞の動態を経時的に細かく観察することはすでにできており、表面マーカーの解析も順調に進んでいる。今後は当初考えていたよりも多くの表面マーカーを、今後検討する予定である。また、腫瘍浸潤樹状細胞の機能解析に関しては、分離を行なう予備実験が終了しており、予定通りに細胞刺激能などの実験は行なえる段階になっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後行なうべき実験は、1)腫瘍浸潤樹状細胞の機能解析、2)悪性黒色腫の悪性度と腫瘍浸潤樹状細胞の動態・樹状細胞を介した免疫反応の関連を(腫瘍側の因子から、あるいは個体免疫状態の因子からの2つの異なるアプローチで)調べる、となる。 1)の機能解析に関しては磁気ビーズで分離した腫瘍浸潤、あるいはリンパ節の樹状細胞の細胞刺激能(抗原提示能)、サイトカイン産生能などを調べる。分離の予備実験はすでに終了している。 2)に関しては、まず抗がん剤による前処置などで、腫瘍の発育が異なるモデルを確立する。すでにシクロフォスファミドの前処置にてB16悪性黒色腫の発育に有意な差が出ることを確認しているため、繰り返して実験を行い、結果の再現性を確認する。その上で、腫瘍の悪性度の差と腫瘍に浸潤する樹状細胞のフェノタイプの違いや機能の違いを詳細に検討していく予定である。 また、悪性黒色腫のCD10発現が新しい予後因子となりうることをすでに明らかにしているため、腫瘍側の因子としてはCD10の発現に着目して同様の実験を行なう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の実験を新たに、あるいは繰り返し行なう予定である。研究費は当初の予定通り、相当数のマウス、フローサイトメトリー用の抗体、免疫染色用の抗体、細胞分離用の磁気ビーズ、サイトカイン測定用のELISA kit、細胞培養関連の消耗品に研究費を使用することになる予定である。 また、実験に必要な機器はすでに研究室にあるもので実験可能である。
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