研究課題/領域番号 |
23791277
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高原 正和 九州大学, 大学病院, 講師 (20398093)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 表皮細胞 / アゾール / AhR |
研究概要 |
抗真菌薬(ケトコナゾール(KCZ)、ルリコナゾール、テルビナフィン)を培養ヒト表皮細胞に投与したところ、アゾール系では、AhR, Nrf2を活性化することが判明した。特にKCZは、Nrf2の核内への移動を強く誘導することが免疫染色で明らかとなった。またRT-PCRとウェスタンブロットによる解析で、Nrf2のmRNAおよびタンパクレペルで発現を惹起した。さらに、その下流となる解毒酵素の1つ、quinone oxidoreductase 1の発現をmRNAおよびタンパクレペルで発現を惹起した。次にKCZの抗炎症作用について検討するため、TNFα刺激下でKCZをヒト表皮細胞に投与した。その結果、TNFαにより活性酸素とIL-8産生が誘導されたが、KCZはそれらを抑制する結果が得られた。この時に、AhRまたはNrf2のいずれかをsiRNAを用いてノックダウンすると、この抑制効果が失われた。また、Nrf2の活性化は、AhRのノックダウンにより消失することもわかった。さらに、AhRの古典的リガンドの1つであるベンゾピレンは、ヒト表皮細胞からIL-8の産生とDNA障害を反映する8-hydroxydeoxyguanosineの産生を促したが、KCZはこれらも抑制することが明らかとなった。これらの結果から、KCZはAhRに結合することで、Nrf2を活性化し、抗酸化、抗炎症効果を発揮することが示唆された。これは、これまでには解明されていなかった新しいメカニズムである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度に計画していた実験については、順調にほぼ計画通りに遂行することができた。研究結果も、当初予想していた結果に反しないものであった。H24年度もさらに研究を発展させて行きたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画に記した通り、H24年度にはアゾールのin vivoでの抗炎症作用を検討する計画である。実際に、マウスを用いた予備的なin vivo実験を行ったところ、KCZ塗布では、マウス皮膚におけるAhRの活性化やCYP1a1の誘導を検出することはできなかった。UV照射など、実験の条件を調整していく必要がある。UV照射により、トリプトファンの代謝物として、内因性リガンドFICZが産生されるので、UV照射下のヒト表皮細胞にKCZなどのAhRリガンドを加えて、その効果を検討したい。それと平行して、長寿遺伝子として知られるSirt1という分子に着目して、研究を広げて行きたいと考えている。Sirt1は、皮膚においても、酸化ストレスや細胞の分化などにも重要な役割を果たしていることが報告されるようになった。ポリフェノールの一種であるレスベラトロールがSirt1を誘導することが知れられているので、我々は、表皮細胞においてAhRがSirt1を誘導するのではないかと考えている。予備実験において、KCZをヒト表皮細胞に投与したところ、KCZがSirt1の発現を誘導することがわかった。今後は、いくつかの他のAhRリガンドでSirt1を誘導するかどうか、またsiRNAを導入して、AhR依存性なのかどうかを明らかにしていきたい。表皮細胞の分化、すなわち角化のマーカー(インボルクリンなど)の発現への影響も検討する考えである。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒト表皮細胞、RT-PCR、ウェスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリーなどに用いる抗体、試薬などの消耗品、マウスが、主な使用用途である。高額な実験機器に関しては、本研究費で購入する予定はない。研究がまとまれば、学会発表を行いたいので、参加費・旅費にも使用したい。
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