アゾール系抗真菌薬の中でもケトコナゾール(KCZ)は、培養ヒト表皮細胞(NHEK)におけるAhR、Nrf2の核内への移動を強く誘導した。またNrf2のmRNA、タンパクの発現、その下流となる解毒酵素、quinone oxidoreductase 1の発現も誘導された。TNFαにより誘導された活性酸素とIL-8産生は、KCZ投与により抑制された。この時に、AhRまたはNrf2のいずれかをsiRNAを用いてノックダウンすると、この抑制効果が失われた。また、Nrf2の活性化も、AhR依存性であった。一方、ベンゾピレンによるIL-8とDNA障害を反映する8-hydroxydeoxyguanosineの産生誘導は、KCZにより抑制された。これらの結果から、KCZはAhRに結合することで、Nrf2を活性化し、抗酸化、抗炎症効果を発揮することが示唆された。また、KCZは表皮細胞においてAhR依存性に長寿遺伝子Sirt1の発現を誘導し、さらにインボルクリンを誘導するなど角化を促す作用を明らかにした。 さらに我々は、新たなAhRリガンドとして、シナロピクリンやビデンスピローサ茶抽出物を見いだし、KCZと同様の抗酸化作用を有することを明らかにした。 マウスを用いたin vivo実験では、KCZを塗布しても、マウス皮膚におけるAhRの活性化やCYP1a1の誘導を検出することはできなかった。このため、NHEKにUV照射を行って、AhRリガンドの効果を検討するモデルを作成した。UV照射によりトリプトファンの代謝物として、内因性リガンドFICZが産生されることが知られている。シナロピクリンなどの外因性AhRリガンドを投与すると、UV照射あるいはFICZによる活性酸素やIL-6、IL-8産生などをAhR-Nrf2依存性に抑制することを明らかにした。
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