研究課題/領域番号 |
23791290
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
塩濱 愛子 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (40383731)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / モデルマウス / ゲノムシーケンシング / 表皮 / フィラグリン |
研究概要 |
本研究では、新規に発見したアトピー性皮膚炎様皮膚炎発症の候補遺伝子ma1に注目し、ma1タンパクの機能を明らかにし、flaky tailマウスにおけるAD様皮膚炎発症機構を解明することを研究期間内の目標とし、以下の研究を順次実施した。1. mRNAの組織発現解析:ノーザンブロット法を用いて成体マウスでのma1 mRNAの発現組織を検討した結果、皮膚に強い発現が認められた。そこで皮膚における詳細な発現を明らかにするために、皮膚を表皮と真皮に分離後それぞれからmRNAを抽出し、定量RT-PCR法にて発現解析を行った結果、表皮での増幅が顕著であり、ma1遺伝子mRNAは表皮にて発現している事を明らかにした。2. ポリクローナル抗体作成と免疫組織染色・タンパク質の細胞内局在解析:ma1タンパク質の発現組織と、細胞内局在を解明するために、ポリクローナル抗体を作成した。ma1タンパクのN末端側およびC末端側のアミノ酸配列に相当するオリゴペプチドを合成し、ウサギに免疫後に血清からペプチドカラムを用いて抗ma1ウサギ抗体を精製した。この抗ma1抗体を用いた蛍光抗体法による免疫組織染色の結果、ma1タンパクは表皮顆粒層の最上層であるSG1領域に発現している事が明らかになった。また、表皮シートを用いた詳細な細胞内発現解析の結果、ma1タンパクは細胞内に局在していた。3. タンパク強制発現系によるma1機能解析:ma1タンパクにHAタグおよびGFPを結合した融合タンパク発現ベクターを作成し、ラット新生仔腎由来株化培養細胞へ遺伝子導入を行い、薬剤選択により安定発現細胞株を作成した。蛍光顕微鏡を用いてma1タンパクの局在を観察したところ、ma1-GFP融合タンパクは培養細胞では粗面小胞体と思われる輸送系細胞内小器官に局在が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ma1遺伝子のmRNA組織発現解析、抗体作製と免疫組織染色、タンパク強制発現系を用いた局在解析は概ね計画通りに遂行したが、タンパク強制発現系で安定発現株の作出に予定よりも時間がかかったため、機能解析を行うための材料を構築することができたが、RNAi法を用いた機能阻害実験を行うまでには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予想通り、ma1タンパクの機能の可能性として、細胞接着装置への関与や脂質を含めた内在的な物質輸送が大いに予想されるため、RNAi法を用いた機能阻害実験については次年度に実施する。 機能解析の一環として、相互作用タンパク質を解明するために、共免疫沈降法とマススペクトロメトリーを用いて相互作用タンパクを同定する予定であったが、活性型タンパクを皮膚より抽出することは非常に難解であり、また株化上皮細胞での強制発現系を用いて実施するためには、慎重な検討を加える必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度に計画を達成できなかった項目(RNAi法による機能阻害実験など)に関しては24年度に引き続き遂行し、それに関わる繰越額を計上した。 24年度における研究計画として、1. 皮膚表皮シート(epidermal sheet)を用いたex vivo三次元局在解析とマウスを用いたin vivo三次元解析、及び2. 角質内脂質の成分解析について研究費の使用を開始する。また、マウスを扱うための飼育費を計上する。
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