本研究では、新規に発見したアトピー性皮膚炎様皮膚炎発症の候補遺伝子ma1に注目し、ma1タンパクの機能を明らかにし、flaky tailマウスにおけるAD様皮膚炎発症機構を解明することを研究期間内の目標とする。本年度は皮膚バリア機能解析を中心とした研究をC57BL/6、flaky tailおよびmaマウスを用いて実施した。 (1)角質機能の解析:角質層の評価を行うために、生後3-5日の幼若マウスの背中を予めサフラニン染色しておき、テープストリップ法で物理的に剥がし、テープに付着し剥がれてくる角質層のパターンを検討した。C57BL/6では角質層が上から1-2枚ずつ順々に剥がれていくのに対し、maマウスでは表皮顆粒層がC57BL/6よりも厚くなっており、さらに1回のテープストリップにて角質層から顆粒層最上層までブロック状に剥がれ、角質層のバリア機能に障害を起こしていることが予想された。 (2)角質内脂質の成分解析:メタノール・アセトン混合液を用いて皮膚及び毛から脂質を抽出後、薄層クロマトグラフィーを用いて分離し、希硫酸を噴霧後に加熱して分離バンドを検出した。flaky tailマウス毛抽出液において、対照であるC57BL/6マウスでは検出されない高Rf値を示すバンドが検出された。このバンドのRf値よりコレステロールエステルであると予想された。 (3)細胞内脂質の解析:マウス表皮シートを作製しナイルレッドを用いた細胞内脂質の染色を行った。C57BL/6マウスでは角質層最下層の細胞膜、及び顆粒層SG1細胞の細胞膜と細胞内脂質が2-3点の顆粒状に染色された。これに対してmaマウスでは細胞膜の他に染色される細胞内脂質顆粒の数が10-20点程度に増加していた。このことから角質層形成に必要な脂質が正常に放出されずに細胞内に滞留している可能性が示された。
|