研究概要 |
これまでの知見として、デスモゾームタンパクの消失により癌の浸潤・転移が促進されることがわかっているが、皮膚癌においては逆に、デスモゾームタンパクが増加するという報告もあり、皮膚癌におけるデスモゾームの発現やその機能がどのようになっているかについて多くが解明されていない。本研究では、平成23年度に有棘細胞癌と基底細胞癌についてデスモコリン1, 2, 3を用いて免疫組織化学によりその有無、局在について検討した。有棘細胞癌ではデスモコリン1は消失しており、デスモコリン2, 3は高分化の腫瘍で表皮と同程度に染色されたが、低分化の腫瘍では弱く染色されただけだった。また、基底細胞癌ではデスモコリン1は正常表皮と比べ非常に弱く染色され、デスモコリン2, 3は正常表皮細胞と同じ程度に陽性に染色された。この結果を基に、平成24年度は有棘細胞癌と基底細胞癌に関してさらにデスモグレイン1, 2, 3の発現を調べた。その結果、有棘細胞癌では正常表皮細胞に比べ、デスモグレイン1は減弱し、デスモグレイン2, 3は発現が増えていた。また、基底細胞癌では正常表皮細胞に比べ、デスモグレイン1は減弱し、デスモグレイン2の発現が著しく増強していた。デスモグレイン3は増強しているものと減弱しているものがあり、一定した傾向が見られなかった。次に、比較のために、良性腫瘍の汗孔腫と脂漏性角化症において、デスモゾームタンパクの発現を調べたところ、デスモコリンの発現は有棘細胞癌、基底細胞癌とほぼ同様であったが、汗孔腫ではデスモグレイン2, 3は正常表皮と比べ強く染色され、脂漏性角化症ではデスモグレイン2, 3は正常表皮と比べ弱く染色された。これより、デスモグレイン2, 3について今後の検討を行うことにした。
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