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2011 年度 実施状況報告書

光線過敏症におけるナイアシンを介した皮膚免疫応答の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23791302
研究機関産業医科大学

研究代表者

杉田 和成  産業医科大学, 医学部, 助教 (40412647)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードペラグラ / ナイアシン / 光線過敏症
研究概要

臨床的にナイアシンは、その過多あるいは欠乏により皮膚症状を発症する。ナイアシンが欠乏した場合には、皮膚症状、消化器症状、精神症状を三徴とするいわゆるペラグラを発症する。臨床的な皮膚の主症状は顔面、手背など日光露光部を中心とした光線過敏症である。ペラグラは全世界でまだ多くの患者が罹患し、ペラグラ患者にみられる光線過敏性の皮疹は診断上重要な所見であるにもかかわらず、ペラグラにおける光線過敏症発症機序は不明である。こうした背景から、我々はナイアシンの光線過敏症における役割を解明するため、ナイアシンアンタゴニストを用いてそのメカニズムに迫ることにした。ペラグラは光線過敏性の皮疹を生じることで知られているが、いまだその詳細なメカニズムは明らかになっていない。我々はナイアシンアンタゴニストを用いて、まず、ペラグラモデルマウスの作成を試みた。ナイアシンアンタゴニスト投与下でマウスにUV照射すると、皮膚炎症が増強し、ドップラーエコーにより皮膚血流増加が観察された。さらに、このマウス皮膚において、シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2) mRNAの発現が亢進していた。反対にプロスタグランジンE合成酵素ノックアウトマウスでは、ナイアシンアンタゴニストを投与し、UVを照射すると、皮膚炎症が減弱した。また、培養表皮ケラチノサイトにナイアシンアンタゴニストを添加の上、UV照射すると、プロスタグランジンE2の産生が亢進した。これらの知見より、ペラグラにおける光線過敏症発症機序へのCOX-2やプロスタグランジンの関与が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画にあげた以下の項目について検討を行った。1. ナイアシン欠乏下における紫外線照射の皮膚炎症への影響2. ナイアシン欠乏症モデルマウス皮膚におけるPGE2の役割の解明3. ナイアシン欠乏症モデルマウス皮膚におけるプロスタグランジンE合成酵素(PGES)発現4. ケラチノサイトのPGE2産生におけるナイアシンの役割の解明

今後の研究の推進方策

ナイアシンアンタゴニストを用いて、ペラグラのモデルマウスの作成を試みた。ナイアシンアンタゴニスト投与下では、紫外線皮膚炎が増強した。さらに、Ptges-/-マウスを用いた検討から、ペラグラにおける光線過敏症のメカニズムとしてPGE2を介した機序が考えられた。今後さらに、ナイアシン欠乏食を用いるなど、より生理的な条件下で検討することにより、ナイアシンの光線過敏症との関連を明らかにすることが肝要と思われる。さらに、近年、紫外線皮膚炎のメカニズムとして、PGE2レセプターの関与についても知られており、ナイアシン欠乏下においても紫外線皮膚炎の増強や遷延に関連している可能性が考えられた。今後COX-2やPGE2の阻害などによるペラグラの新しい治療法の開発が望まれる。

次年度の研究費の使用計画

上記の方策をふまえて、具体的には以下の3項目についての検討を考えている。1. ペラグラの光線過敏症の発症機序にウロカイン酸の欠乏が関与するとの報告もあるため、紫外線照射部皮膚におけるウロカイン酸の定量も試みたいと考えている。ウロカイン酸の定量については計画どおりに進まないことも考えられるため、その場合、ナイアシン欠乏下での紫外線照射部皮膚におけるfilagrrin の発現についてmRNAや免疫染色で検討したいと考えている。2. ペラグラモデルマウスにおけるプロスタグランディン(PG)産生機構の解明を行う。紫外線を用いてナイアシン欠乏食を与えたC57BL/6マウスに光線過敏症を誘発させる。これまでの研究成果から、ペラグラモデルマウスにおける紫外線皮膚炎の誘発にPGE2が関与すると考えられる。そのため、PGE2のレセプターであるEP1,EP2,EP3,EP4の各レセプターの皮膚での発現レベルをreal-time PCRで確認する。その際、経時的な変化も調べる。加えて、これらのレセプターのうち、どのレセプターがナイアシン欠乏下での光線過敏症発症に重要であるか、EP1-EP4の各ノックアウトマウスやアンタゴニストを用いて、紫外線皮膚炎を調べる。さらに、PGE2レセプターの下流にあり細胞内シグナル伝達に関与する、cAMPの産生について、ELISAで検討する。3.ヒトでのナイアシン欠乏症における光線過敏症促進因子の解明を行う。小動物(マウス)のみならず、ヒトでの光線過敏症に対するナイアシンの役割とその生理的意義について検証する。ペラグラ患者の光線過敏症をきたした患部皮膚でのプロスタグランディンの関与について免疫染色にて調べる。プロスタグランディン合成酵素(PGES)は炎症により発現が誘導されるPGES-1と恒常的に発現しているPGES-2が知られているため、免疫染色で両抗体を用いる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] ペラグラにおけるPGE2の役割2011

    • 著者名/発表者名
      Sugita K et al.
    • 雑誌名

      Photomedicine and Photobiology

      巻: 33 ページ: 3-4

  • [学会発表] ペラグラモデルマウスの確立とPGE22011

    • 著者名/発表者名
      杉田和成
    • 学会等名
      第41回欧州研究皮膚科学会
    • 発表場所
      Barcelona International Convention Centre(バルセロナ)
    • 年月日
      2011年9月9日
  • [学会発表] 光線過敏症におけるナイアシンの役割2011

    • 著者名/発表者名
      杉田和成
    • 学会等名
      第33回日本光医学光生物学会(招待講演)
    • 発表場所
      大阪大学銀杏会館(大阪)
    • 年月日
      2011年7月23日
  • [学会発表] ペラグラモデルマウスの確立2011

    • 著者名/発表者名
      杉田和成
    • 学会等名
      第40回日本免疫学会学術集会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉)
    • 年月日
      2011年11月27日

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公開日: 2013-07-10  

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