ペラグラは痴呆,下痢,皮膚炎の3徴を認める,世界的に未解決の重篤な代謝疾患である.3徴のうち,皮膚炎は光線過敏性の皮疹を生じることが特徴であるが、いまだその詳細なメカニズムは明らかになっていない。我々はナイアシンアンタゴニストおよびナイアシン欠乏食を用いて、ペラグラモデルマウスの作成を試みた。ナイアシンアンタゴニスト投与下でマウスに紫外線を照射すると、皮膚炎症が増強し、ドップラーエコーにより皮膚血流増加が観察された。興味深いことに,紫外線皮膚炎の増強に加え,体重減少と下痢も認めたことから,我々のマウスモデルはペラグラに特徴的な症状を伴った.紫外線照射下でのペラグラマウス皮膚において、シクロオキシゲナーゼ-2 (COX-2) mRNAの発現の亢進を確認した.反対にプロスタグランジンE合成酵素ノックアウトマウスでは、ナイアシンアンタゴニストを投与し、紫外線を照射すると、皮膚炎症が減弱し,皮膚血流も低下した。また、培養表皮ケラチノサイトにナイアシンアンタゴニストを添加の上、紫外線を照射すると、プロスタグランジンE2の産生が亢進した.他方,ナイアシン欠乏下で紫外線をEP4アンタゴニスト投与マウスに照射すると紫外線皮膚炎が減弱した.さらに,ヒトペラグラ皮膚において,プロスタグランジンE合成酵素が強く発現していることを示した.これらの知見から、ペラグラの光線過敏症はプロスタグランジンE2-EP4シグナルを介して生ずることが示唆された.
|