研究概要 |
正常皮膚不死化細胞株(HDK1K4DT)を用い野生型および変異型組み換えヒトパピローマウイルス(HPV)ゲノムを保持する細胞の樹立に成功した。HDK1K4DTは、これまで用いてきた子宮頚部上皮不死化細胞株と比較して、分化誘導能をもち、3次元分化誘導培養で角層形成まで分化誘導が可能である。それを用いてE1蛋白質の3つの異なるphaseにおけるウイルスゲノム複製機構の解明を行い、E1蛋白質が初期複製・後期複製に必須であるが維持複製には必要ないことを示し発表した。ウイルス蛋白を必要としない複製機構は宿主側の免疫機構刺激しにくく、持続感染に有利に働いている可能性がある。また、E1は抗ウイルス薬の標的として期待されE1阻害剤の開発が試みられているが、E1阻害剤は維持複製を阻害しない可能性が示され、E1阻害剤の効果は限定的である可能性がある。この過程で開発したFLP-FRT系を用いた外来遺伝子の発現制御系と変異型組換えHPVを用いることで、HPVの任意の蛋白質の機能を生活環の中で検討することが可能となった。加えて、L2領域を薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子と置き換えたウイルスゲノムを作製し、ウイルス粒子の作製、感染実験・初期複製・維持複製のモニターや複製阻害剤のスクリーニングに応用を検討し予備実験を行った。 我々の発見したHPV126型は扁平疣贅様臨床形態をもつが、病理組織学的には細胞内封入体をもち表皮肥厚は顕著ではないが,Ki-67染色で角層直下まで陽性であるなど、特異な「HPV型特異的細胞変性効果(CPE)」を示していた。このHPV126ゲノム全長をクローニングし、HPV126として、病理組織学的特徴と共に発表した。近年新型HPVの報告の多くはDNA配列のみで、臨床像などのCPEの記載がなく、シークエンスから臨床像、組織学的特徴まで記載されたHPV126の報告は意義深いと考えられる。
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