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2011 年度 実施状況報告書

統合失調症とアスペルガー障害の社会認知障害に関する認知神経科学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23791306
研究機関北海道大学

研究代表者

豊巻 敦人  北海道大学, 医学(系)研究科(研究院)精神医学分野, 助教 (70515494)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード統合失調症 / アスペルガー障害 / 社会認知 / 社会知覚
研究概要

統合失調症は妄想・幻覚を主体とする精神症状が現れる代表的な精神疾患である。アスペルガー障害は自閉症スペクトラム障害の1つで知的機能が高い一群であるが社会性が低下している発達障害の一種である。これまでの報告から統合失調症とアスペルガー症候群は、社会認知処理過程の低次から高次過程までのいずれかで障害されていることが示唆されるが、(1)統合失調症、アスペルガー症候群のそれぞれ単独で、大細胞系視知覚、社会知覚、情動的評価の全過程を包括的に検討した研究は無い。(2)また統合失調症とアスペルガー症候群の社会認知障害の共通性、差異性について同一施設で同一の手続きで両群を対象に検討した研究は無い。(3)神経生理学的手法(脳波の事象関連電位)による大細胞系視知覚(運動視、高時間分解能処理)の検討は統合失調症では報告されているがアスペルガー症候群を対象とした研究は無い。こうした基礎的検討を通して、社会認知障害の心理学的な評価法や神経基盤を評価する検査法を提案し精神科領域で鑑別診断や社会性の評価のための補助的検査として用いられることを目指す。平成23年度は、主に社会認知機能を評価する認知心理学的課題を作成し、健常者群、統合失調症患者群、アスペルガー障害群でデータを蓄積した。課題は社会知覚課題として、Biological motion弁別課題、表情認知課題を作成した。共感性を評価する課題として視点取得課題を作成した。それぞれの課題について、統合失調症患者群は健常者群と比して有意に行動成績が低下していたが、アスペルガー障害群は低下する課題とそうでない課題が見られ統合失調症患者群とは異なる様相を示していた。アスペルガー障害群について自閉症傾向や感覚偏奇傾向を評価する質問紙を計測しているがこれらと行動成績に関連があり、社会認知機能の偏奇に寄与する要因を形成していると思われた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成23年度分の研究計画について大細胞系視知覚課題、社会知覚課題、共感性能力評価課題について健常者、統合失調症患者、アスペルガー障害患者について行動データを得た。具体的には健常者は20名、統合失調症患者は20名、アスペルガー障害患者については18名のデータを得た。大細胞系視知覚課題については、健常者群と比して、統合失調症患者群、アスペルガー障害患者群と有意な相違は見られなかった。社会知覚課題(Biological motion知覚)については、統合失調症患者群は健常者群よりも有意に低下していた。アスペルガー障害群では今のところ有意差は見られなかった(有意な低下傾向は観察されている)。我々の仮説では、大細胞系視知覚と社会知覚は影響関係があると考えているが、健常者群、患者群を合計したデータについて相関分析を行ったところ、有意な相関が見られた。つまり大細胞系視知覚(特に運動視)が低下するほど、社会知覚能力が低下するということであり、社会知覚がより低次の視知覚機能で説明出来る可能性が高いことが分かった。精神症状との相関については、それぞれ社会知覚課題、共感性能力評価課題で統合失調症の精神症状評価尺度や、アスペルガー障害群では自閉症スペクトラム指数などと様々な相関が見られており、それぞれの精神疾患の重篤度と関連することが分かった。これらのデータについては、グローバルCOE「心の社会性に関する教育研究拠点」総括シンポジウムで発表したが解析を進めて、平成24年度でも学会、論文発表を進める。

今後の研究の推進方策

平成24年度は、23年度の検討で分かった統合失調症とアスペルガー障害での社会認知機能の低下の基本障害を探索するために、脳波の事象関連電位、機能的MRI、質問紙などを用いて、行動課題の成績低下に寄与する神経基盤、低次の知覚処理、心理特性について検討したい。収集したデータを用いて、高度な統計解析を行い、それぞれの要因間の因果関係を記述し、社会認知機能の問題の詳細を明らかにしたい。また意義のある結果については順次、学会発表、英文誌への論文投稿を行っていきたい。

次年度の研究費の使用計画

3月度購入物品が4月支払いとなるために1,163,004円の未使用額が発生した。平成24度は、実験に参加する健常者、統合失調症患者、アスペルガー障害患者の謝金(時給1000円程度)に用いたい。23年度の検討で幾つか有意義な知見が得られたので、英文誌へ投稿したと考えている。そのために英文校正のための費用として用いたいと考えている(1論文あたり、5万円程度)。また学会発表も国内学会、国際学会を予定しており、その旅費として用いたいと考えている(国内学会は10万円程度、国際学会は30万円程度)。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 発達性ディスレクシアの認知神経科学的理解2011

    • 著者名/発表者名
      豊巻敦人
    • 雑誌名

      心理学評論

      巻: 54 ページ: 45-53

    • 査読あり
  • [学会発表] 気分障害における作業記憶課題遂行時の 事象関連電位・事象関連同期の異常2011

    • 著者名/発表者名
      豊巻敦人 清水祐輔 橋本直樹 宮島真貴 久住一郎 小山司
    • 学会等名
      第41回臨床神経生理学会学術大会
    • 発表場所
      グランシップ(静岡市)
    • 年月日
      2011年11月10日

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公開日: 2013-07-10  

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