PC12を用いた実験により、アリピプラゾールは濃度依存的に神経突起を伸ばした。ここに5-HT1A受容体アンタゴニストであるWAY-100635を加えると、アリピプラゾールの効果が阻害された。この効果は部分的であった。5-HT1Aアゴニスト8-OH-DPATはコントロールに対して約200%弱神経突起を伸ばした。D2受容体アンタゴニストの実験では、コントロールに対してアリピプラゾール単独では神経突起を伸ばしたが、これにスルピリドを加えても何の変化もみられなかった。スルピリド単独でも特に神経を伸ばすことも無かったため、この作用はD2受容体の関与ではなく、5-HT1A受容体の関与が示唆された。さらに詳細なメカニズムを調べるために,細胞内シグナル経路について調べた。細胞内シグナル系の選択的な阻害薬によってアリピプラゾールの効果が阻害された。しかしながら、これらの阻害薬単独では、特に何の影響も無かった。また、mTORの下流では蛋白合成が起こり、最終的に神経突起伸長が起こるのではないかと考え、プロテオミクス技術を用いて新規ターゲットを探索した結果、神経突起伸長を引き起こすことが報告されているシャペロン蛋白の一つであるHSP90αを同定した。 〈結論〉 アリピプラゾールは濃度依存的にNGF誘発神経突起伸長作用を促進することが判った。またその作用には5-HT1A受容体が一部関与していることが判った。アリピプラゾールの神経突起伸長促進作用には、IP3受容体や多くの細胞内シグナル伝達系が関与していた。プロテオーム解析を用いてアリピプラゾール処置により増加する蛋白質として、HSP90αを見出し、アリピプラゾールの神経突起伸長促進作用に関係していることが示唆された。
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