研究課題/領域番号 |
23791310
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒木 剛 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (00456120)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 統合失調症 / アットリスク精神状態 / 事象関連電位 / 生物学的指標 / ミスマッチ陰性電位 |
研究概要 |
本研究は統合失調症の発病前後における脳機能の変化を事象関連電位によって検証するものである。統合失調症前駆期をふくむアットリスク精神状態の被験者、初発統合失調症患者、健常被験者を対象に、統合失調症の脳病態を反映すると言われている事象関連電位のひとつであるミスマッチマッチ陰性電位を測定した。現在までに、アットリスク精神状態の被験者18名、初発統合失調症患者16名、健常被験者21名に対しての測定が修了している。平成23年度の目的は、これらの3つの群を比較する横断的検討を行うことによって、統合失調症における進行性脳病態を反映する生物学的指標を得ることが第一となっている。聴覚ミスマッチ課題に関しては、本研究では持続時間の逸脱によって得られる持続時間ミスマッチ陰性電位、周波数の逸脱によって得られる周波数ミスマッチ陰性電位の2種類のミスマッチ陰性電位を測定した。結果として、持続時間ミスマッチ陰性電位においては、アットリスク精神状態と健常被験者、初発統合失調症患者と健常被験者との間に有意な群間差がみられた。周波数ミスマッチ陰性電位においては、3群間で有意な群間差は得られなかった。これらより、持続時間ミスマッチ陰性電位の異常が、統合失調症発病前後の脳病態変化を反映している可能性が示唆される。これまで、精神疾患において診断や予後予測などに使用できる生物学的マーカーはほとんど認められておらず、実際の臨床に応用できる段階にまで至っていない。ミスマッチ陰性電位は臨床応用の可能性もみられており、今後のさらなる検証が必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的はほぼ達成している。予後予測などにミスマッチ陰性電位が使用できるかどうかについては未達成であり、次年度の縦断的研究の推進が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづきミスマッチ陰性電位の測定を行っていく。縦断的検討も行っていくために、一度測定をおこなった被験者の1年度のミスマッチ陰性電位の測定や病状の把握も重ねて行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
被験者謝金、成果発表のための学会参加費、出張費、論文発表のための英文校閲費、データ保存のためのハードディスクドライブ、データ解析のためのPCなどに使用予定。
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