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2011 年度 実施状況報告書

うつ病の神経可塑性障害仮説に基づく海馬歯状回の機能に関する脳画像研究

研究課題

研究課題/領域番号 23791317
研究機関福井大学

研究代表者

藤井 猛  福井大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命講師 (80570837)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード抑うつ気分 / 機能的MRI / 海馬
研究概要

健常成人30人を対象として、類似度を変化させた視覚刺激のペアを用いて遅延見本合わせ課題を用いた実験を施行した。課題遂行中の脳活動を高解像度の機能的MRIという手法で計測して特に海馬周辺の領域に注目して解析した。 結果は類似度が高い条件では正答率が低下し、反応時間は延長した。海馬の活動は記銘、保持、想起の時期で海馬の頭部と尾部の活動は変化を示した。中でも頭部では記銘時においてのみ刺激の類似度による活動変化を示した。頭部内側のCA1では類似度が高くなると線形に活動低下するのに対し、頭部外側の歯状回やCA3では同一刺激のペアの条件のみで活動が低下し反応様式が異なった。類似度の高い条件での頭部内側と頭部外側の活動は共に抑うつ気分(ベックうつ病スケール)の程度と高い負の相関を示し、その相関は類似度が高い条件で特に強かった。さらに誤答時よりも正答時の活動が強かった。また、抑うつ気分と記銘時の活動が相関する部位を海馬全体から探すと頭部外側においては歯状回やCA3の領域のみならずCA1領域でも負の相関を示し、特に類似度が高い条件で相関が強まることが明らかになった。 これらの結果から健常者における海馬の頭部外側部の歯状回やCA3がpattern separationに強く関与し、健常者の気分によってその活動が変化することを示した。さらにうつ病をはじめとした気分障害患者でも気分によって海馬の活動が変化し、その活動を測定することで気分のバイオマーカーとなり得る可能性を示唆しいている。 この成果は日本神経科学大会、Society for Neuroscience 2012で発表した。現在、投稿に向けて論文を執筆中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究費の交付内定を受け取る前から準備を進めていたために、健常者の機能的MRI実験のデータ取得と解析を予定通り終え、平成24年度以降に予定していた学会発表での成果発表を出来た点では予定以上の進展と言える。しかし、若手研究(B)の新規採択分交付内定が遅延した影響で、灌流MRI実験の準備としての海外で行われるFSL & FreeSurfer講習会への参加申し込みは間に合わず、平成24年度に延期して参加することとした。

今後の研究の推進方策

健常成人を対象とした機能的MRI実験を実際に施行してみて被験者の感想や行動データから明らかになったことは、課題の難易度が高いために誤答が比較的多いことである。今後、うつ病患者を対象に実験を行うことから難易度を多少下げることも視野に入れて、うつ病患者を対象に予備実験をする必要がある。また、これまでの結果から注目する点が主に記銘と想起時に絞られたため、今後用いる課題において記銘と想起のセッションを分離して、脳活動の検出感度を向上させるなどの工夫によって撮像時間の短縮を図り、被験者の疲労に配慮したい。 もし仮に現在用いている遅延見本合わせ課題で患者群と対照群に行動や脳活動の差を認めない場合には、先行研究では情動喚起時にうつ病患者の行動特徴が顕在化しやすいことが指摘されており、情動喚起する刺激を用いたPattern separationに課題を修正して、患者と健常者の比較をする必要があるかもしれない。

次年度の研究費の使用計画

患者及び健常者を対象とした機能的MRI実験を施行するために、被験者や実験補助者への謝金で、40万円程を見込んでいる。また、データ解析の量的負担が大きくなるために解析用コンピュータを購入する予定である。さらに平成23年度に参加できなかったFSL & FreeSurfer講習会の旅費および参加費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2011 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Effect of d-cycloserine and valproic acid on the extinction of reinstated fear-conditioned responses and habituation of fear conditioning in healthy humans: a randomized controlled trial2011

    • 著者名/発表者名
      Kenichi Kuriyama, Motoyasu Honma, Takahiro Soshi, Takeshi Fujii, Yoshiharu Kim
    • 雑誌名

      Psychopharmacology

      巻: 208 ページ: 589-597

    • DOI

      10.1007/s00213-011-2353-x

    • 査読あり
  • [学会発表] 注意の違いに関わらず抑制の負荷は脳活動を変化させる:機能的MRI研究

    • 著者名/発表者名
      谷中 久和, 齋藤 大輔, 河内山 隆紀, 藤井 猛, 小坂 浩隆, 島田 泰輔, 浅井 竜哉, 岡沢 秀彦
    • 学会等名
      第34回日本神経科学大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      2011年9月17日
  • [学会発表] 海馬歯状回におけるパターン分離による活動と主観的な気分との関係:機能的 MRI 研究

    • 著者名/発表者名
      藤井 猛, 齋藤 大輔, 谷中 久和, 小坂 浩隆, 及川 広志, 岡沢 秀彦
    • 学会等名
      第34回日本神経科学大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      2011年9月16日
  • [学会発表] The response inhibition load dependent activity: a functional MRI study

    • 著者名/発表者名
      Hisakazu T. Yanaka, Daisuke N. Saito, Takanori Kochiyama, Takeshi Fujii, Hirotaka Kosaka, Taisuke Shimada, Hidehiko Okazawa
    • 学会等名
      Organization for Human Brain Mapping 2011 Annual Meeting
    • 発表場所
      Quebec City Convention Centre (Quebec)
    • 年月日
      2011年6月27日
  • [学会発表] 経鼻オキシトシン投与は自閉症スペクトラム障害者の目の領域への注視時間を延長する

    • 著者名/発表者名
      小坂 浩隆, 棟居俊夫, 齋藤大輔, 藤井 猛, 谷中 久和, 石飛 信, 成田耕介, 村田 哲人, 大森 晶夫, 定藤規弘, 岡沢 秀彦, 和田 有司
    • 学会等名
      第33回日本生物学的精神医学会
    • 発表場所
      ホテル グランパシフィック LE DAIBA (東京)
    • 年月日
      2011年5月22日
  • [学会発表] Oxytocin effect in young males with autism spectrum disorders: An eye-tracking study

    • 著者名/発表者名
      H.Kosaka, T.Munesue, DN.Saito, T.Fujii, H.Yanaka, M.Ishitobi, M.Asano, K.Narita, T.Murata, M.Omori, H.Okazawa, N.Sadato, Y.Wada
    • 学会等名
      Exploring Autism Research Collaboration Between Japan and United States Joint Academic Conference on Autism Spectrum Disorders
    • 発表場所
      日本財団ビル(東京)
    • 年月日
      2011年12月2日
  • [学会発表] Encoding related activity in dentate gyrus is associated with subjective mood: A functional MRI study

    • 著者名/発表者名
      T.Fujii, D.N.Saito, H.T.Yanaka, H.Kosaka, H.Oikawa, H.Okazawa
    • 学会等名
      Society for Neuroscience 2011
    • 発表場所
      Walter E. Washington Convention Center (Washington, DC)
    • 年月日
      2011年11月13日
  • [学会発表] Oxytocin facilitates eye contact in young males with autism spectrum disorders

    • 著者名/発表者名
      H.Kosaka, T.Munesue, DN Saito, T.Fujii, H.Yanaka, M.Ishitobi, K.Narita, T.Murata, M.Omori, N.Sadato, H.Okazawa, Y.Wada
    • 学会等名
      Society for Neuroscience 2011
    • 発表場所
      Walter E. Washington Convention Center (Washington, DC)
    • 年月日
      2011年11月12日
  • [図書] EBM精神疾患の治療2010-20112011

    • 著者名/発表者名
      (編集)上島 国利、三村 將、中込 和幸、平島 奈津子 (分担執筆)藤井 猛, 藤堂 直之, 金 吉晴 他
    • 総ページ数
      6 (169-174)
    • 出版者
      中外医学社

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公開日: 2013-07-10  

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