研究課題/領域番号 |
23791317
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
藤井 猛 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 医師 (80570837)
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キーワード | 抑うつ気分 / 海馬 / 機能的MRI |
研究概要 |
ヒトの海馬におけるpattern separationに関する脳活動を計測するために、遅延見本合わせ課題を修正した。また、海馬の亜領域の活動を分離して計測するために高解像度の機能的MRI撮像法の設定を行った。さらに脳画像解析では被験者間での脳画像の高精度の位置合わせを可能とする手法を確立した。これらにより健常者を対象とした遅延見本合わせ課題の機能的MRI実験を行い、pattern separationに関する海馬の亜領域の脳活動を計測し、自記式の抑うつ尺度の点数との関係について解析した。海馬の歯状回やCA3が記名時のパターン分離に中心的な役割を果たし、かつその活動低下が健常者における閾値下の抑うつ気分に関連していることを示すことができた。この結果を学術論文として「Depressive mood modulates the anterior lateral CA1 and DG/CA3 during a pattern separation task in cognitively intact individuals: A functional MRI study」というタイトルでHippocampus誌に掲載し公表することができた。 次に健常者での抑うつ気分と海馬の活動の関連がうつ病患者でも認められるか検証するため、うつ病患者を対象とした遅延見本合わせ課題の機能的MRI実験の準備を行った。予備実験としてMRI外での行動実験データ取得を行い、うつ病患者でも受けられるように実験時間を短縮するために課題の調整を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画した3つの実験のうち、1つ目の健常者を対象とした機能的MRI実験は終了し論文発表できた。2つ目のうつ病患者を対象とした機能的MRI実験は以下の理由で実施が遅れている。3つ目の還流MRI実験も実施に至っていない。 健常者での結果がうつ病患者にも適用できるか検証するために計画していた、うつ病患者を対象とした遅延見本合わせ課題の機能的MRI実験は、研究代表者が所属研究機関を異動したため、改めて異動先機関で倫理審査、および研究用MRI使用に関する申請が必要となった。さらには研究用MRI使用に関する申請は、うつ病患者でのMRI外での行動実験データの追加提出を求められた。従って平成25年度はうつ病患者を対象とした遅延見本合わせ課題の機能的MRI実験のデータ取得に至らず、MRI外での行動実験データ取得にとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
事業期間延長承認申請書を提出し、当初平成25年度で終了予定であった事業期間を平成26年度まで延長した。平成26年度にうつ病患者を対象とした遅延見本合わせ課題の機能的MRI実験を実施する。3つ目の実験として予定していたうつ病患者を対象とした還流MRI実験を、より簡便で造影剤を用いないArterial Spin Labeling法を用いるように変更し、機能的MRI実験に合わせて実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度までに行った健常者を対象とした遅延見本合わせ課題の機能的MRI実験の結果を元に、平成25年度にうつ病患者を対象に同様の機能的MRI実験を行う予定であった。 しかし、新任地の国立精神・神経医療研究センター病院の研究審査で機能的MRI実験の前にうつ病患者の行動データを提出するよう求められた。そのため、計画を変更し平成25年度は行動データの取得および解析のみを行うこととしたため、未使用額が生じた。 うつ病患者を対象とした機能的MRI実験のデータ取得および解析を次年度に行うこととし、未使用額はその経費(被験者謝金、実験補助者謝金、刺激提示ソフトライセンス料)に充てることとした。
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