研究課題
自閉症の原因は遺伝子的要素が強いとされているが、未だ原因遺伝子の特定には至っておらず、遺伝的要因と環境要因の相関性が深く病因に関与していることが示唆されている。本研究課題では、この相関性をエピジェネティクスの観点から解明することを目的とする。環境要因によりエピジェネティクス(特にメチル化)の変化する自閉症候補遺伝子を同定し、自閉症発症メカニズム解明、更には予防法および治療法の開発に利用する。具体的には自閉症リスクファクターである環境要因【ウイルス(poly(I:C))】に暴露した胎児脳のDNAのメチル化状態、およびメチル化酵素の発現の変化を解析し、環境要因によって胎児脳のメチル化異常がおこる時期を同定する。次に、メチル化異常が引き起こされる遺伝子、特に自閉症候補遺伝子について解析し、メチル化状態に異常の認められた候補遺伝子の発現を解析する。以上の結果から自閉症関連環境要因に高感受性の遺伝子を同定し、遺伝子の特性とを組み合わせ自閉症発症への関与を考察する。当該年度実施した研究の成果:実験動物はマウスを用い、環境要因としてウイルス感染を用いた。胎児を持つ母マウスにpoly(I:C)、もしくはネガティブコントロールとして生理的食塩水を腹腔内投与した。環境要因によってメチル化の変化が起こる時期が異なる可能性がある。そこでそれぞれの発達の段階に胎児の脳を採取し、発生期に重要なメチル化酵素の遺伝子発現を解析した。その結果、時期特異的にメチル化酵素の発現が異常であることを明らかにした。続いてメチル化酵素の発現異常が認められた時期の脳における自閉症候補遺伝子の発現を解析し、数種類の遺伝子の発現が異常であることを突き止めている。
2: おおむね順調に進展している
当初研究計画通りに実験・解析が進んでいる。また、その結果として、時期特異的にメチル化酵素の発現が異常であることを明らかにし、メチル化酵素の発現異常が認められた時期の脳において数種類の自閉症候補遺伝子の発現が異常であることを突き止めている。これらは目的を達成するのに重要な結果である。以上のことからおおむね順調に進展していると考える。
引き続き続いてメチル化酵素の発現異常が認められた時期の脳における自閉症候補遺伝子の発現を解析する。その後、発現異常が認められた自閉症候補遺伝子のメチル化状態を解析する。続いて、同定された遺伝子のメチル化異常および発現異常は、生後どの時点まで認められかを検討する。以上の解析から、環境要因によるメチル化異常が起こる環境要因感受性遺伝子を同定し、またその異常の継続される期間を明確にし、遺伝子の特性と組み合わせ自閉症発病への関与を考察する。
消耗品として以下の購入に使用する。動物購入、実験動物飼育費、メチル化解析関連試薬&キット、各種分子生物学的研究キット、生物学的解析用試薬、その他試薬類。加えて、国内外学会参加費、学会発表準備費、論文投稿費としても使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
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