研究課題/領域番号 |
23791325
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
毛利 彰宏 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), COE特任助教 (20597851)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / アメリカ / ジョンズホプキンス大学 |
研究概要 |
臨床知見に基づく統合失調症動物モデルを作製し、統合失調症の発症機序の解明および、それに基づいた予防法および治療法の開発を目的とし、本年度は以下の成果を得ることができた。統合失調症の病態仮説にグルタミン酸仮説がある。グルタミン酸作動性神経系の主要な受容体であるNMDA受容体に対する拮抗薬であるフェンサイクリジンの慢性投与は統合失調症様の行動障害を惹き起す。そこで、フェンサイクリジンによる統合失調様の行動障害における遺伝要因の関与について、マウス間での系統差から検討した。ddY, C57BL6JおよびC57BL6N,ICRマウスの順に障害に対して脆弱であることを明らかにし、その変化にはNMDA受容体シグナルに関連していることを明らかにした。また、教育的に恵まれた環境下で成長すると統合失調症の発症が抑制されるかどうかについて、オブジェクトやトンネル等を配置した豊かな環境下での飼育はフェンサイクリジンによる統合失調様の行動障害の発現について検討した。豊かな環境下での飼育はフェンサイクリジンによる統合失調様の行動障害の発現を抑制すること、その効果はヒストンのアセチル化の亢進と関連していることを明らかにした。また、神経の発達障害が統合失調症を惹き起すという神経発達障害仮説が提唱されている。そこで、発達段階である胎生期におけるフェンサイクリジンの影響について検討した。胎生期のフェンサイクリジンの投与は前頭皮質のグルタミン酸作動性神経系の増殖を抑制するとともに成体期の学習障害を惹き起すことを明らかにした。本年度はフェンサイクリジンによる統合失調症様の行動障害における遺伝要因・環境要因の関与を明らかにするとともに、発達段階へのフェンサイクリジンの投与による神経発達障害仮説に基づいた動物モデルの作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請の目標は臨床知見に基づく統合失調症動物モデルを作製し、統合失調症の発症機序の解明および、それに基づいた予防法および治療法の開発であり、その目標を達するために4つの課題のうち2つを達成した1. 要因のモデル化ならびに単一要因の影響3. 発症予防となる環境要因の影響1について、統合失調症様の行動障害を惹き起すフェンサイクリジンの投与によるマウス間の系統差を検討した。薬理学的統合失調症モデルであるフェンサイクリジン投与マウスとして汎用されている系統であるddY および ICRマウス、遺伝子学的統合失調症モデルとして汎用されている系統であるC57BL6JおよびC57BL6Nマウスで比較した。本成果はフェンサイクリジン投与マウスにおける遺伝的要因を明らかにすると共に、薬理学的および遺伝子学的動物モデルを比較するにうえに重要な成果を達成することができた。また、発達段階である胎生期におけるフェンサイクリジンの影響について検討した。胎生期のフェンサイクリジンの投与は前頭皮質のグルタミン酸作動性神経系の増殖を抑制するとともに成体期の学習障害を惹き起すことを明らかにし、フェンサイクリジンを用いた神経発達障害モデルを作成することを達成することができた。3について、教育的に恵まれた環境下で成長すると統合失調症の発症が抑制されるかどうかについて、オブジェクトやトンネル等を配置した豊かな環境下での飼育はフェンサイクリジンによる統合失調様の行動障害の発現について検討した。豊かな環境下での飼育はフェンサイクリジンによる統合失調様の行動障害の発現を抑制することから、統合失調症の発症予防として豊かな環境下での教育が環境要因として重要であることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本申請の目標は臨床知見に基づく統合失調症動物モデルを作製し、統合失調症の発症機序の解明および、それに基づいた予防法および治療法の開発であり、その目標を達するために残り二つの課題を中心に行う。2. Two-hit仮説に基づく要因の複合化による発症・重篤化4. 単一および複合的な遺伝要因・環境要因が与える周産期・思春期の遺伝子発現への影響2について、Two-hit仮説に基づき、周産期に遺伝要因・環境要因を負荷した動物に、思春期に環境要因をさらに負荷する事により、成体期における精神機能に異常が認められるか、もしくは単一の要因で認められた精神機能異常が重篤化するかどうかを明かにする。具体的には遺伝要因として変異DISC1遺伝子過剰発現マウスを用い、環境要因として冬季出産リスクを模した環境を胎生期に暴露、出産感染リスクをポリイノシトール-シトシンによる免疫応答を惹起、発症リスクである環境要因であるストレスを隔離飼育により再現する。4について、単一および複合的な遺伝要因・環境要因が与える周産期・思春期の遺伝子発現への影響について検討を行い、統合失調症に対する脆弱性・発症に関わるリスク遺伝子の同定、それを標的とした新規予防・治療薬の開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は申請者が名古屋大学から名城大学に移動したため、名城大学にて培養システムを立ち上げるため、次年度へ繰越した研究費は倒立顕微鏡の購入に充てる。また、本年度はマウス、環境要因に負荷時に使用する装置・試薬、また遺伝子ならびにタンパク発現を解析する試薬の購入に研究費を主に使用する予定である。
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