研究課題/領域番号 |
23791326
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山崎 信幸 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80511360)
|
キーワード | 認知行動療法 / うつ病 |
研究概要 |
平成24年度では、申請者は引き続き認知行動療法(CBT)の治療技法の習熟に努めるとともに、平成23年度中に確立させたスーパービジョンの方法や構造・機能的MRI画像の取得・解析方法を用いて、研究を進めた。実際にこれまで16名のうつ病患者に対して、厚生労働省のプロトコールに基づき、合計16セッションのCBTを実施している。CBT前後において、恐怖を誘発する視覚情動刺激写真を課題とする機能MRI画像および構造MRI画像を撮影した。またCBTの前後において、ベックうつ病尺度(BDI-II)、ハミルトンうつ病尺度(HAM-D)、臨床評価尺度(CGI)、全般性機能評価(GAF)、非機能的思考尺度(DAS-24)、状態・特性不安検査(STAI)、WHO式主観的ウェルビーイング尺度(SUBI)、SF健康調査票(SF36)、Cloninger気質性格検(TCI)、ウェクスラー成人知能検査(WAIS-III)の心理検査を実施した。また対照群として10名の健常群に心理検査・脳画像検査を実施した。 本研究を通じて、治療開始から平均6年経過した難治性うつ病患者に対して申請者がCBTを実施したところ、うつ症状、不安症状が有意に改善することが分かり、申請者が治療効果の高いCBTを実施していることが確認された。平成25年度も引き続き、症例数の確保に努めるとともに、最終的には、うつ病患者において、CBT実施後に変化した脳構造・機能を調べることで、CBTによるうつ病の治癒に関わる脳内の神経回路を明らかにすることを目的としている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度に習熟させた治療技法およびスーパービジョン体制をもとに、うつ病・気分変調症の患者に認知行動療法を実施して、うつ症状・不安症状が有意に改善する治療効果を確認することができた。平成23年度の研究では、症例数の確保が問題であったが、平成24年度はスーパービジョンの方法を簡略化させることで、症例数をより多く確保することが可能となった。具体的には合計17名のうつ病患者および10名の健常対照群に対して、心理検査、構造MRI検査、機能MRI検査を実施している。画像解析平成24年度中に実施することができずに平成25年度の課題となってはいるものの、平成23年度に確立させた研究体制をもとに、実際のうつ病患者、健常者に対して質の高い研究を実施することができたため、平成24年度の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度、平成24年度に確立させた研究体制をもとに、平成25年度も引き続き、うつ病患者群・健常対照群に対して研究を実施し、症例数の確保に努めたい。平成24年度は被験者を確保することが研究の中心であったが、平成25年度は、これまでに得られた心理検査、脳画像検査をもとに、CBT群において、治療前後に変化した脳構造・機能領域を同定し、健常対照群のデータと比較検討することで、CBTに特異的な脳構造・機能変化を考察する。さらにCBT前後で変化した構造・機能異常領域の画像モダリティー間における関連を解析することで、CBTによるうつ病の治癒に対応した神経メカニズムに関して考察を加える予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では、平成24年度は、画像解析を実施する予定で、画像解析ソフト等の購入を予算に計上していたが、実際の解析は平成25年度に実施することとなった。また解析結果の一部を平成24年度中に国際学会等で発表する計画を立ており、そのための旅費を計上していたが、これも平成25年度に実施する予定である。そのため平成24年度には484,948円の繰り越しが発生することとなった。平成25年度は引き続き、被験者にMRI撮像、心理テストをしていただくため、被験者への謝金の額が多くなると予想される。画像解析ソフト等の解析環境の整備が必要である。また研究成果を積極的に学会や学術雑誌に発表していく予定である。
|