研究課題
発達障害においては、表情、視線、動作などの社会認知障害、実行機能(抑制機能)、報酬系などの認知機能障害があることが示唆されているが、これらの認知機能障害は、疾患特異的な障害ではなく、他の精神疾患においても認めうる。特に、発達障害には、気分障害、不安障害、強迫性障害、チック障害、精神病性障害などを高率に併存することが知られており、なかには成因上の関連を示唆する報告もあることから、両者の関係を巡っては、鑑別から併存に至るまで複雑な関連がある。発達障害の診断ならびにテーラーメイド治療に関連する認知機能障害を明らかにするためには、併存障害とその認知障害特性を明らかにすることが不可欠である。本年度は、発達障害に併存する各種の病態について、疫学、症状学、自然経過、神経生物学、治療反応性について先行文献を中心に検討を加え、病態理解ならびに診断と治療において留意すべきポイントをまとめた。特に、発達障害に関連しうる認知機能のうち、統合失調症への特異性が示唆される探索眼球運動や、精神疾患のみならず発達障害にしばしば認められる実行機能障害については本研究を通して集めたデータをもとに詳細な検討を行い、統合失調症における成果を複数の英文論文としてまとめた。その他のエビデンスについては、日本の学術雑誌において報告するとともに、国内外の複数の招待講演において提示し、得られた知見の当領域への還元をはかった。加えて、その成果の一部を一般向けの書籍のなかに盛り込み、社会への還元を行うように努めた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は発達障害に関するデータ取得を進める前に、ADHD症状、不安障害、強迫、チック障害、気分障害、精神病状態など、認知機能に関連しうる発達障害の併存特性に着目し、その成果を講演、論文等にまとめることができた。これらの成果をもとに、課題を調整し、研究パラダイムの修正、除外基準の再検討、評価尺度の追加等を行った。これらは当初の予定通り、順調に遂行しており、次年度は発達障害における社会認知障害の様態を明らかにする研究により組むことが可能である。よって、交付申請書に応じた研究が概ね予定通り遂行できていると判断した。
今年度は、ソフトの購入等に必要と予定していた経費について、既に保有のソフトの使用が可能になったため残余が生じた。反面、次年度については、採取データの記録ならびに解析には、当初より高機能の機材になることが予測され、来年度に回して使用することとした。来年度は、発達障害の対人認知機能に関するデータの取得を進める。
主として、データの記録と保存(メモリ増設、記憶装置の購入)、解析、執筆論文の英文校閲費用への使用を予定している。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 7件) 図書 (6件)
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