研究概要 |
助成期間において、我々は約30名の損傷症例、および対象となる健常者に対して、MRIによる脳画像撮像、および神経心理課題、社会認知課題などを行ってきた。これまでの予備的な検討において、眼窩面・腹内側前頭前野の脳損傷例を対象に基本六情動における認知機能が全般に低下していることを明らかにし (1 Callahan, Ueda ら、2011)、さらに、びまん性軸索損傷群においても、特に情動認知課題の成績低下が社会機能の低下に影響を与えていることを報告してきた (生方、上田ら、2011年高次脳機能障害学会学会発表)。我々のこれまでの研究の結果と総合すると、損傷のタイプによらず情動認知の低下は生じ、結果として社会参加の障害となっていることが推測された。一方で情動の表出面の障害であるアパシー症状については、局所脳損傷症例において明らかに有意に症状が強く、びまん性軸索損傷症例ではむしろアパシーを認めないという結果が得られた。また、びまん性軸索損傷症例では、脳梁膨大部、視床などにおいてそれぞれ白質・灰白質の体積減少を認めている。 これらの認知的・あるいは社会認知的な障害と、損傷部位についての関連はまだ同定できておらず、解析中である。 このように、後遺症のうち、両群での出現頻度が異なるものが明らかになったこと、またびまん性軸索損傷における脳体積減少の好発部位が明らかになったことから、両群の症状および脳神経画像による弁別可能性が示唆された。今後症例数を増やし、さらに詳細に検討を予定している。 1) Callahan BL, Ueda K, 他5 名中2 番目. Liberal bias mediates emotion recognition deficits in frontal traumatic brain injury. Brain Cogn. 2011 Sep 23.
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