研究課題/領域番号 |
23791329
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮田 淳 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90549099)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 構造的connectivity / TBSS / Surface-based approach / トラクトグラフィ / 視床ー皮質経路 / 眼窩前頭皮質 |
研究概要 |
本研究では、統合失調症における意思決定プロセスの異常の神経基盤を、connectivity異常の観点から解明することを目的とした。具体的には、1)統合失調症の構造的・機能的connectivity異常の解析、2)統合失調症の意思決定プロセスの異常の解明、3)connectivity異常、意思決定プロセスの異常、症状・行動の3つの階層相互における相関の解明の3項目について明らかにすることを目的とした。平成23年度は統合失調症患者、健常者のリクルート、構造MRI・拡散テンソル画像(DTI)・安静時機能的MRIの撮像、および神経経済学的課題および認知心理学的課題の施行を行い、データベースの充実に努めた。その中で比較的早い段階から使用可能となった構造MRI・DTIデータを用いて、構造的connectivity解析を行った。まず統合失調症における灰白質病理と白質病理が脳全体として関連しているのかどうか、という問いに対して、DTIの全脳的解析手法であるTBSSと灰白質厚を全脳で測定するsurface-based approachを用いて、統合失調症群において全脳のDTI指標の異常と、皮質全体の菲薄化との間に相関があることを示した(Sasamoto et al, in preparation)。一方、トラクトグラフィを用いた局所の白質・灰白質病理の関連については、統合失調症における視床―皮質経路の異常について検討し、視床から眼窩前頭皮質に投射する線維におけるDTI指標の低下が、その投射先である眼窩前頭皮質の厚さの減少と正の相関を示していることを発見した。(Kubota et al, in revision)。これらの研究により、統合失調症の病態を、全脳レベルおよび局所のネットワークレベルにおける統合失調症の構造的connectivity異常として明らかにすることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トラクトグラフィを用いた構造的コネクティビティ解析には多大な時間がかかるため、当初は平成24年度以降に着手する予定であったが、サンプル数が比較的スムーズに集まったことと、並列分散処理による画像解析が比較的速やかに行えたことで、平成23年度中に行うことが出来た点は、予定されていた以上に進展していると言える。一方、安静時機能的MRIの解析は平成23年度中に着手する予定であったが、集団解析の施行に当初予定していたよりも時間を要しており、現在施行中である。全体では概ね予定通りの進行状況と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
安静時機能的MRIの集団解析を進め、これにより統合失調症における機能的connectivity異常を明らかにする。またそれによりconnectivityの低下が示された灰白質領域間のトラクトグラフィを行い、機能的connectivityの低下の構造的基盤を検討する。一方、意思決定課題の課題成績と相関する構造的・機能的connectivity異常を、一般線型モデルを用いた全脳的相関解析で明らかにする。異常のように、connecitivity異常の病態を機能・構造面から明らかにした上で、それが意思決定の異常とどのように関連しているかを明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度はデータ量特に画像データ量が増大するため、一台2テラバイト程度のストレージを購入する。また、国内学会及び国際学会に参加し、情報収集及び研究成果発表を積極的に行う。平成24年度は患者健常者合わせて70人の被験者をリクルートする予定であり、そのための被験者謝金を計上している。
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