研究課題
本研究では、1)統合失調症の構造的・機能的コネクティビティ異常の解析、2)統合失調症の意思決定プロセスの異常の解明、3)コネクティビティ異常、意思決定プロセスの異常、症状・行動・QOLの3つの階層相互における相関の解明の3項目について明らかにすることを目的とした。平成24年度は前年度に引き続き、被験者のリクルート、構造MRI・拡散テンソル画像(DTI)・安静時機能的MRIの撮像、および意思決定課題の施行を行い、データベースの拡充に努めた。構造MRI・DTIデータを用いた構造的コネクティビティ解析では、まずDTIの全脳的解析手法であるTBSSと灰白質厚を全脳で測定するsurface-based approachを用いて、統合失調症群において全脳のDTI指標の異常と、皮質全体の菲薄化との間に相関があることを示した(Sasamoto et al, Schizophrenia Bulletin, in press)。次に局所の白質線維の異常を検討するトラクトグラフィ用いて、統合失調症において、視床から眼窩前頭皮質に投射する線維におけるDTI指標の低下が、その投射先である眼窩前頭皮質の厚さの減少と正の相関を示していることを発見した(Kubota et al, JAMA Psychiatry 2013 70:12-21)。これらの研究により、統合失調症の病態を、全脳レベルおよび局所のネットワークレベルにおける構造的コネクティビティ異常として明らかにすることが出来た。また異なる階層間の相関については、構造MRIに対するVoxel-based morphometryの手法を用いて、特定の脳領域の灰白質体積と主観的QOLとが相関することを明らかにした(Ubukata et al, J Psychiatr Res. 2013 47:548-54)。
2: おおむね順調に進展している
構造的コネクティビティ解析、および異なる階層間の相関の解析については、予定より早い段階で結果を示すことが出来た。安静時機能的fMRIを用いた機能的コネクティビティ解析については、十分なサンプル数がほぼ達成でき、現在精力的にデータ解析を進めている。意思決定課題については、健常被験者では問題なく施行可能であったものが、患者では課題の理解度に問題があり、課題を修正する必要があったため、解析に必要なサンプル数の達成にやや遅れが生じている。予定より進んでいる部分、やや遅れている部分があるが、全体としては概ね予定どおりの進行状況と考えられる。
安静時機能的MRIの集団解析により、統合失調症における機能的コネクティビティ異常を明らかにする。またそれによりコネクティビティの低下が示された灰白質領域間のトラクトグラフィを行い、機能的コネクティビティと構造的コネクティビティとの関連を検討する。また、意思決定課題の課題成績と相関する構造的・機能的コネクティビティ異常を、一般線型モデルを用いた全脳的相関解析で明らかにする。 最終的に、機能的・構造的コネクティビティ異常、意思決定異常、症状・行動・QOLの3つの階層間の相関構造を明らかにする。
患者・健常者あわせて40人程度の被験者をリクルート予定であり、そのための謝金が必要である。また平成25年度は最終年度であり、国内学会および国際学会に積極的に参加し、情報収集および研究成果発表を行い、論文作成をおこなう。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
JAMA psychiatry
巻: 70(1) ページ: 12-21
10.1001/archgenpsychiatry.2012.1023
Journal of Psychiatric Research.
巻: 47 ページ: 548-554
10.1016/j.jpsychires.2013.01.002
Schizophrenia Bulletin
巻: in press ページ: in press
10.1093/schbul/sbt030