研究課題
当該年度は、最終年度として実臨床において必要となる、ヒトの時計遺伝子の反復測定を行った。具体的には、時計遺伝子を抽出する生体試料としては血液を用い、同一被験者から同時刻に反復測定を行い、生活リズムが一定である場合、その時計遺伝子発現量にどの程度変化が出現しうるのかどうか、検討を行った。一方、生体リズムの乱れから引き起こされる睡眠障害の典型的な状態として、時差症候群が挙げられる。この時差症候群に着目し、8時間以上の時差の存在する地域を5日間以上の間隔を空けて移動した場合に、出発前、帰国後、帰国1週間後に時計遺伝子発現量がどのように変化しうるのか検討を加えた。リアルタイムPCRでは、目的遺伝子としてPeriod1(PER1)、Period3(PER3)、Rev-erbd(NR1D1)を選択し解析を行った。その結果、同一被験者において同時刻に反復測定を行った場合PER1ではPre(1.40E+00~7.54E-01)、Post(1.20E+00~6.90E-01)と対象者間での大きな相違がみられた。ただし、低値の者は反復測定でも低値であり、高値の者は反復測定でも高値である傾向を認めた。PER3もPER1と類似した結果であった。一方、NR1D1では同時刻の反復測定において、同一被験者内で値は大きな相違を示した。時差症候群については、同時刻に測定した場合、PER1ではPre、Post、Recoverの状態で、PreからPostで変動がみられた後、Recover時点ではPreの値に近い状態にまた戻る傾向が強く、ヒトの体内リズムの変動を反映しやすいものと考えられた。PER3では、Pre、Post、Recoverの状態で、ほぼ類似した値を示し、時差異動に伴う変化は小さいものであった。また、NR1D1では、同一被験者の同時刻反復測定の結果と同じく、同一被験者内で値が一定しなかった。
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