研究課題
本研究では、日本人サンプルを含むメタ解析において、統合失調症との関連を報告した、CHI3L1遺伝子の、認知機能、脳MRI画像、性格傾向、認知課題時の脳血流変化、神経生理機能などのヒト脳の表現型との関連を検討し、またその遺伝子の発現変動、動物や細胞レベルでの機能等も網羅的に検討することを目的としている。平成23年度は、統合失調症とCHI3L1遺伝子との関連を明らかにするために、統合失調症患者および健常対照群の死後脳やリンパ芽球におけるCHI3L1遺伝子発現測定し、統合失調症患者由来リンパ芽球において、CHI3L1遺伝子発現が変化している事を見出した。また、リンパ芽球におけるCHI3L1遺伝子発現とリスク多型との関連、統合失調症患者由来の血清におけるCHI3L1遺伝子由来の蛋白とリスク多型との関連を見出した。統合失調症のリスクに関連するといわれている神経生物学的な表現型への影響では、CHI3L1遺伝子のリスク多型が、性格傾向である自己超越性Self-Transcendence (ST)に影響を与える事を見出している。平成24年度は、神経生物学的な表現型として、知能などの認知機能、脳MRI画像、神経生理機能とCHI3L1遺伝子リスク多型の関連を検討したが、これらと、CHI3L1遺伝子のリスク多型との関連を見出す事はできなかった。本研究の独創性・新規性は、脳科学、遺伝学、分子生物学の技術を統合してヒトの脳神経回路の分子メカニズムを解明する点である。申請者は、CHI3L1遺伝子の発現変動、CHI3L1遺伝子リスク多型の血清蛋白への影響、性格傾向への影響を見出した。CHI3L1が統合失調症と多面的に関連していることが示されており、統合失調症における分子遺伝学的基盤に、CHI3L1が重要な役割を果たしている事が明らかになり、疾患の早期介入および治療に役立つ事が期待される。
すべて 2013 2012
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