研究概要 |
自殺者・健常対照群死後脳の腹外側前頭前野(DLPFC)領域から切り出した脳サンプルを用いて、現在同定されているCRFに関連する遺伝子群(CRF, CRHBP, CRHR1, CRHR2, UCN1(ウロコルチン), UCN2, UCN3, バゾプレッシンとその受容体、オキシトシンとその受容体)のmRNAをリアルタイムPCR法にて測定した。またウェスタンブロッティング法により各蛋白質発現量も測定し、二群間での差を測定した。さらにプロモーター領域の遺伝子変異をデータベースから網羅的に調べ、機能的一塩基多型(SNP)やタグSNPを選別、タイピングし、機能的ハプロタイプを同定して自殺者との関連解析を行った。現時点で各遺伝子において健常者と対照群において有意な差や相関を認めていない。さらに、我々は衝動性や攻撃性を制御する自殺行動に関わる候補遺伝子の一つとしてEP1遺伝子とFKBP5遺伝子に着目して自殺と健常者DNAを用いた関連解析を行った。EP1はプロスタグランジン(PG)E2の受容体である。PGE2-EP1受容体カスケードをはじめとするプロスタノイド系は免疫系のみならず神経系における役割が分かってきた。特にEP1欠損マウスでは心理ストレス下においてドパミン放出を介して衝動性亢進が見られ、我々の自殺との関連研究とも合わせて自殺行動の有望な候補遺伝子、神経パスウェイである可能性がある。今回我々はさらに自殺におけるプロスタノイド情報伝達系の役割を調べるために自殺者死後脳のEP1、PGE2、PG合成酵素であるCOX1,COX2の脳内発現を測定し、同時に遺伝学的関連解析を行う予定である。
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