研究課題/領域番号 |
23791339
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平野 昭吾 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (10568984)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 音声処理 / 脳磁図 |
研究概要 |
現在までに統合失調症患者22名および正常対照者23名における聴覚誘発反応の計測が終了している。正常対照者20名のデータを解析することにより、音声刺激を提示した際に、刺激提示直後から刺激提示後500ミリ秒の間、左側頭部および前頭部において、刺激提示のタイミングに同期した7~8Hz帯域の磁気活動が、純音刺激を提示した際よりも有意に大きいことが認められた。Hickok GとPoeppel Dによれば、シータ帯域活動は、言語処理の脳内機構において、音節単位での情報処理課程の活動を反映しているものと想定されている(Hickok G and Peppel D. Nat Rev Neurosci 2007)。これによれば、今回の結果は、音声と純音の聞き分けは、音節単位での情報処理課程が関わって、刺激後500ミリ秒以内という比較的早期に行われていることが想定される。この結果は、次年度以降の正常対照者と統合失調症患者の比較研究や、脳MRI画像と脳磁図データを組み合わせた、より詳細な脳機能研究において、関心領域を絞っていくことができるという点で大きな意義を持つと思われる。また、今回のデータ解析においては、高性能ワークステーションを購入し、MATLABおよびMATLAB上で動作する脳波および脳磁図データ解析用のオープンソースソフトウェアであるFieldTrip(http://fieldtrip.fcdonders.nl/にて入手可能)を用いて行っているが、これらにより膨大な脳磁図データを、より詳細にまたより短時間に解析を行える環境を構築しつつあることは、次年度での研究において大きな意義を持つと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに統合失調症患者22名および正常対照者23名における聴覚誘発反応の計測が終了している。また、高性能ワークステーションの購入および、MATLABおよびFieldTripの導入と、より詳細な脳磁図データの解析に必要な環境も構築しつつある。さらに正常対照者において、音声刺激提示の際と純音刺激提示の際での7~8Hz帯域の磁気活動の差異を認めることに成功した。これらの点では研究計画は順調に進行、もしくは計画以上に進行していると評価できる。しかし、先行研究の検証については解析および検討は進んでいない。総じて、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、統合失調症患者および正常対照者における聴覚誘発反応のさらなるデータの蓄積を行う。得られたデータの解析を進め、正常者における音声知覚の脳内機構の検討を行う。また統合失調症患者群と正常対照者群でのデータ比較を行うことにより、統合失調症患者における音声知覚の脳内機構の異常を検索する。得られた結果は積極的に国内外の関連学会や学術誌において発信する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の推進方策に則り、被験者のデータの測定のため実験協力費および脳磁計使用費として30万円、旅費、投稿費用・印刷費として60万円、データ処理用ワークステーションのハードディスク、メモリ等の消耗品として30万円程度の使用を計画している。ワークステーションの消耗品費が当初の計画より増額となっているが、これは脳磁図のデータを実際に解析するにあたり、当初の計画よりもより高い処理速度、処理量が必要であり、ワークステーションへの負荷が予想以上に大きくなることおよびより高性能の大容量のハードディスク、メモリ等がさらに必要となること判明したためである。
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