研究課題
前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)は、多様な臨床症状を呈し、いくつかの異なる病理学的背景を有する疾患群である。本年度はFTLDに関連した臨床特徴の研究として、FTLD様の症状を呈した橋本脳症の症例群の臨床的特徴について共同演者として学会報告を行った。同様にFTLD様の症状を呈した間歇型一酸化炭素中毒の症例について共同演者として学会報告を行った。これらの報告を通してFTLD類似の臨床症状を呈する症例の背景が多様であることについて理解を深めることができた。さらにFTLD剖検脳の症例の臨床記録から、FTLDに特徴的な臨床症状について、出現時期、出現期間、重症度などの調査を行っている。また、FTLDに関連した病理学特徴の研究として、FTLD様の症状を呈したNasu-Hakola病における灰白質の病理所見について共著者として論文報告を行った。また、FTLD様の症状を呈したハンチントン病に神経線維腫症1型を合併した1剖検例について共同演者として学会発表を行った。これらの報告を通してFTLD類似の臨床症状を呈する症例の病理所見も多様であることについて理解を深めることができた。さらに、最近、FTLD脳に蓄積する異常構造物の主構成成分がTAD-DNA-binding protein 43 (TDP-43)もしくはfused in sarcoma (FUS) proteinであることが明らかにされ、病態の解明が急務となっている。このうちFUS proteinに関連する研究として正常脳のニューロピルにFUS陽性微細顆粒として認められることを共同演者として学会報告を行った。これはFUS proteinの病的蓄積の手掛かりとなる研究である。
2: おおむね順調に進展している
一部、当初の計画と異なる点もあるが、研究の目的に沿って研究対象を拡大した結果である。さらに、これらの研究について学会報告や論文発表を行うことができている。
前述の学会発表を行った研究や症例報告について国内外の論文に投稿する予定である。また、今後はさらにFTLD剖検脳についてヘマトキシリン・エオジン染色等のルーチン染色に加え、リン酸化タウ、ユビキチン、TDP-43、FUS proteinなどに対する抗体を用いた免疫組織化学を行い病理学的検討を進めていく予定である。
学会報告や論文作成に必要な費用、病理学的研究に必要な試薬や免疫組織化学で用いる抗体などの費用に用いる予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件) 図書 (1件)
J Neurol Sci
巻: 314 ページ: 111-119
Neuropathology
巻: 31 ページ: 135-143
J Neuropathol Exp Neurol
巻: 70 ページ: 264-280