広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder、以下PDDと略す)は、相互的な対人関係、言語やコミュニケーション、共感性、想像力などの障害を特徴とする発達障害である。PDD児のなかには聴覚過敏性などの感覚異常を有し、日常生活へ支障が大きい児がいることが経験的に知られていた。しかし、その有症率、症状メカニズム、他の精神病理との関係性については不明な点が多く、臨床上の大きな課題となっている。 対象は大阪市立大学医学部附属病院神経精神科を受診した精神遅滞を有さない6歳から15歳までの、DSM-IV-TR診断によるPDD児である。現時点で64例(自閉性障害症57例、特定不能のPDD7例)について解析を行った。感覚過敏性は、『各感覚器系(聴覚、触覚、視覚、味覚、嗅覚)についての通常の刺激に対し、持続的に著しい苦痛を伴い日常生活に支障をきたしたり、その結果回避したりすること』と定義したところ、現在なんらかの感覚過敏性を有するものは高率(67%)であった。また聴覚過敏性の有症率が54.7 %と最も多く、触覚、味覚、視覚、嗅覚の過敏性がそれぞれ25.0%、15.6%、7.8%、4.7%であった(重複含む)。また感覚過敏性を現在有する群は有さない群に比べ、Child Behavior Checklist(CBCL)において身体的訴え、内向得点、総得点について有意に高い得点を示し、Youth Self Report (YSR)において引きこもり、思考の問題、注意の問題、内向得点、総得点について有意に高い得点を示した。 高機能PDD児は高頻度に感覚過敏性を有し、感覚過敏性を有する高機能PDD児はより重篤な精神病理を併存する。PDD児診療において感覚過敏性の評価は重要であり、これへの対処により抑うつなどの随伴する内在化症状が軽減するかもしれない。
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