研究課題/領域番号 |
23791351
|
研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
倉冨 剛 獨協医科大学, 医学部, 助教 (00593592)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 統合失調症 / 認知機能 / 遂行機能 / ワーキングメモリ |
研究概要 |
平成23年度は、統合失調症の病態に対する小胞輸送関連遺伝子HPS4の影響を調べるために、HPS4遺伝子の多型と認知機能障害との関連解析を実施した。 認知機能評価には認知機能簡易評価尺度 (Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia, BACS) の計6項目 (言語記憶、ワーキングメモリ、運動機能、注意、言語流暢性、遂行機能) を用い、統合失調症患者207名、健常対照者262名を対象として、HPS4遺伝子内の多型5箇所と認知機能評価との関連解析をTwo-way ANCOVAを用いて実施した。その結果、ワーキングメモリとHPS4遺伝子内のrs9608491多型 (p = 0.043)、及び遂行機能とHPS4遺伝子内のrs61276843多型 (p = 0.014)、rs713998多型 (p < 0.001) との間に有意な関連が認められた。 rs713998多型は、健常者群の遂行機能には影響を与えず、統合失調症患者群の遂行機能にのみ強く関連することがPost-hoc検定によって示された。rs713998多型はアミノ酸置換を伴う多型であることから、アミノ酸置換によるHPS4タンパク質の分子機能変化が、統合失調症患者群においてのみ認知機能に影響を与える可能性が示唆された。一方、ワーキングメモリとの関連が認められたrs9608491多型は、HPS4の第4イントロンに位置しており、本多型とHPS4遺伝子のmRNA発現量との間に有意な関連は認められなかった。 本研究により、小胞体輸送関連遺伝子HPS4がワーキングメモリ及び遂行機能と関連すること、特に遂行機能については統合失調症患者群に対し強い影響を与えることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にて平成23年度に実施予定であったHPS4遺伝子多型と統合失調症認知機能簡易評価尺度の関連解析については完了し、アミノ酸置換を伴うHPS4遺伝子多型と統合失調症患者群における遂行機能との関連を示すことができた。本研究結果については二度の学会発表を行ったうえで論文作成を進めており、研究はおおむね順調に進展している。平成24年度は本研究結果に基づき、当該アミノ酸周辺領域を標的としてHPS4遺伝子の分子機能解析を進める予定である。 また、平成24年度以降に実施予定の細胞・組織レベルのHPS4遺伝子機能解析に向けて、GFP融合HPS4タンパク質の神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞への導入、in situハイブリダイゼーション用プローブ作成等の基礎検討を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、in situハイブリダイゼーション法を用いたHPS4遺伝子のマウス脳局在解析、及び酵母2ハイブリッド法スクリーニングを用いたHPS4結合タンパク質の解析を実施する。 HPS4遺伝子については平成23年度の結果により認知機能との関連が明らかになったが、中枢神経系における発現局在の詳細については報告されていない。平成24年度はワーキングメモリ及び遂行機能に対するHPS4遺伝子の役割を明らかにするために、まずin situハイブリダイゼーション法を用いてマウス中枢神経系におけるHPS4遺伝子の発現部位を解析する。次にHPS4ミュータントマウスを導入し、HPS4局在部位における組織学的異常の探索を行う。 また認知機能解析により明らかとなった、認知機能と関連するアミノ酸置換を伴うHPS4遺伝子多型について、当該アミノ酸の周辺領域がHPS4のタンパク質間結合に影響を与えうるかを酵母2ハイブリッド法及び免疫沈降・ウェスタンブロット法を用いて解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費については、消耗品の節約等により生じた平成23年度の残額とともに、(1) 物品費として組織学・細胞生物学的解析に用いる試薬及びプラスチック器具消耗品等の物品費、(2) 学会(米国)における学会発表の旅費、として使用する。 物品費の内訳としては、(1) in situハイブリダイゼーション及び組織免疫染色用試薬、(2) HPS4ミュータントマウスの導入及びマウス飼育費用、(3) 細胞培養及びタンパク質機能解析用試薬 (酵母2ハイブリット法、免疫沈降・ウェスタンブロット法) とプラスチック器具消耗品、に使用する予定である。
|