研究課題/領域番号 |
23791351
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
倉冨 剛 獨協医科大学, 医学部, 助教 (00593592)
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キーワード | 統合失調症 / 認知機能 / 遂行機能 / ワーキングメモリ |
研究概要 |
小胞輸送関連遺伝子HPS4と統合失調症との関連を解明するために平成24年度は、 1. HPS4の遺伝子多型と認知機能障害の関連解析 (平成23年度より継続)、2. in situハイブリダイゼーション法によるHPS4遺伝子の組織発現解析、3. HPS4遺伝子に点変異を持つコンジェニックマウスの導入を行った。 1. HPS4の遺伝子多型と認知機能障害の関連解析: 平成23年度から継続して患者サンプルを拡充し、統合失調症患者群240名および、性別、年齢についてグループマッチングを行った対照群240名を対象として、HPS4の遺伝子多型と統合失調症認知機能簡易評価尺度の結果との関連解析を行った。HPS4遺伝子のrs9608491多型およびrs9608491-rs713998ハプロタイプと対照群のワーキングメモリ、rs713998多型と患者群のワーキングメモリ、rs713998多型と患者群の遂行機能について、多重検定の補正後も有意な関連が認められた。 2. in situハイブリダイゼーション法によるHPS4遺伝子の組織発現解析:HPS4 mRNAを標的としたDIG標識RNAプローブを作成し、成熟雄マウスの脳におけるHPS4遺伝子の発現部位を解析した。HPS4は海馬、扁桃核および海馬周辺皮質において発現が認められた。 3. HPS4遺伝子に点変異を持つコンジェニックマウスの導入: HPS4遺伝子にナンセンス点変異を持つコンジェニックマウスであるlight earマウスを供給業者より購入し繁殖を進めた。Light earマウスは視覚に影響を与える変異を保持していることが報告されているため、交配により変異の分離を進めている。 本研究により、HPS4遺伝子はマウスの海馬、扁桃核および海馬周辺皮質に発現しており、ヒトにおいてはワーキングメモリおよび患者群の遂行機能に関連することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画において平成25年度に進める予定であった、in situハイブリダイゼーション法を用いたHPS4遺伝子の発現部位解析については、本年度に実施した。また平成25年度に解析する予定のHPS4点変異マウスについても本年度に導入を行い、繁殖と遺伝子の分離を進めている。 当初計画において本年度に実施予定であったIPウェスタン法および酵母2ハイブリッド法等を用いたHPS4の分子機能解析については、海外グループにより論文が報告され (Gerondopoulos A et al., 2012)、HPS4がRab32/38のグアニンヌクレオチド交換因子として働くことが明らかとされたため、本研究課題ではHPS4の組織学的解析に主眼を置くこととした。 平成23年度に完了予定であったHPS4遺伝子と統合失調症認知機能障害の関連解析については、論文がリジェクトであったため、当初計画から遅延してサンプルの拡充と再解析を行い再投稿の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には、海馬関連領域におけるHPS4の機能解析、及びHPS4点変異マウスの組織学解析を実施する。 HPS4は海馬、扁桃核、海馬周辺皮質において発現が認められた。これらの領域におけるHPS4の機能をより詳細に解析するために、細胞免疫染色を用いてHPS4と各種細胞マーカー (CamKII、GAD等) との共発現を解析する。 現在繁殖を進めているHPS4点変異マウスについては、HPS4変異以外に視覚に影響を与える変異を保持していることが報告されているため、交配により変異の分離を行う。変異を分離したマウスを用いて、海馬関連領域などHPS4の発現が認められた部位における組織学的異常の探索を行う。マウスの一般身体状態や感覚機能の評価については解析を委託した上で、ヒトにおいてHPS4と関連が認められたワーキングメモリ等については行動実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、消耗品や学会費の節約等によって生じた平成24年度の残額と共に次のように使用する。 (1) 物品費として組織学解析 (in situハイブリダイゼーション、免疫組織化学染色、ニッスル染色等) に用いる試薬、プラスチック器具消耗品等および、マウスの購入、(2) 旅費として学会 (米国) における学会発表の費用、(3) その他の費用として動物飼育料およびマウス表現型解析の委託費用。
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