研究課題
統合失調症における認知機能障害は陽性・陰性症状と並ぶ中核症状であり、治療と社会的予後において大きな問題となる。本研究では、新たに統合失調症との関連が報告された小胞輸送関連遺伝子HPS4について、認知機能障害との関わりを解明することを目的としている。本年度は、既存のコンジェニック系統であるlight ear(le)マウスより、Hps4遺伝子にのみナンセンス変異を持つ分離個体の作成を行った。leマウスはHps4遺伝子にナンセンス変異(le変異)を持つコンジェニック系統だが、近傍(約1.6 cM)のPde6b遺伝子にも変異を持つ。Pde6b遺伝子変異は網膜変性を引き起こすため、leマウスを行動実験や神経系の組織学的解析に用いることは困難であった。本研究ではヘテロ接合体マウスをインタークロスしle変異のみを有する分離個体を選別した。またin situハイブリダイゼーション法によりHps4遺伝子の組織学的解析を行った。Hps4遺伝子は海馬のCA1、CA3錐体細胞層に特異的な発現を示した。第二に、統合失調症患者群と健常対照群について、HPS4の遺伝子多型と統合失調症認知機能簡易評価尺度との関連を遺伝モデルに基づいて解析し(平成24年度より継続)、一連の研究結果をBMC Psychiatry誌に報告した。健常対照群ではHPS4の遺伝子多型(rs9608491:劣性モデル)と2種のハプロタイプがワーキングメモリと有意な関連を示した。統合失調症患者群では、rs713998(優性モデル)と遂行機能が有意な関連を示した。本研究で用いた遂行機能課題(ロンドン塔試験)は空間記憶との関連が示唆されており、空間記憶に関連する海馬領域でHps4遺伝子の発現が認められたことから、本遺伝子が空間記憶に関連する認知機能に対し影響を与える可能性が示唆される。
すべて 2013
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BMC Psychiatry
巻: 13:276
10.1186/1471-244X-13-276