研究概要 |
術後合併症であるせん妄は予後を左右する大きな因子の一つであり、神経伝達物質の活性変化や炎症機構との関連が注目されている。本研究では食道癌根治術などの高侵襲手術を対象に、従来の患者・手術因子の検討のみならず、周術期の血清コリン活性および血漿I型インスリン様増殖因子濃度、分離単球からの炎症性サイトカイン産生を中心に検討し、せん妄発生のメカニズムを炎症機構の側面から考察を加えることによって、せん妄発生の予測および予防・治療法確立を目指すことを目的とした。分離単核球を用いた分裂促進因子活性化キナーゼ発現(Mitigen-Activated Protein Kinase;MAPK)測定実験では、ウェスタン・ブロット法による検出において、ERK1/2,p-38,JNK共に、術前に比し術後において有意にリン酸化されていることが確認された。このことから、手術侵襲により全身に炎症が惹起され、単核球のMAPKカスケードが活性化されることが示唆された。
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