研究課題
アルツハイマー病AD(Alzheimer's desease:AD)患者においては、記憶障害などのために社会生活上の破綻を来しているのにもかかわらず、あたかも問題がないかのように振舞ったり、取り繕ったりする特徴的な社会的認知の障害が出現する。この社会的認知の障害の神経基盤を明らかにすることを目的として、まず最初に場合わせ・取り繕い反応などの特徴的兆候の定量的評価尺度のプロトタイプを作成した。その上で研究協力者と協議を重ね、パイロットケース数例に対して施行した後、改良を加えて完成版を作成した。これによりADの病態理解が深まることが期待され、病初期における鑑別診断のツールとしても有用である可能性があるため、今後活用したい。さらにこれらの行動兆候は、家族介護者の負担も大きくなる兆候であるため、この評価尺度によってそれらが軽減することも期待される。さらに研究計画に基づき、ADの臨床診断基準を満たす外来通院患者を対象に対して、実際にこの定量的評価尺度の施行を開始している。対象者に対しては同時に社会的認知の課題も施行している。対象者の年齢、性別、教育歴、罹病期間、認知機能(MMSE)、認知症の重症度(CDR)、精神症状の有無とその重症度と頻度(NPI)、さらに脳血流SPECTと言ったデータも並行して収集している。ただしこれらに関してはまだ解析を施行していない状態であるため、結果は明らかになってはいない。これは平成24年度に行う予定である。また、本研究に関連したさまざまな研究成果を国内学会・国際学会での発表し、和文・欧文学術誌にも投稿した。
2: おおむね順調に進展している
場合わせ・取り繕い反応などの特徴的兆候の定量的評価尺度のプロトタイプを作成し、パイロットケースに対して施行した上で改良を加えた上で完成版を作成した。症例の登録も順次進行している。
引き続き症例の蓄積を図り、データを収集する。それとともに結果の統計的解析を開始し、各因子の相関などを検討する。結果については国内学会・国際学会での発表を行い、また和文・欧文学術誌に投稿し成果発表を行う予定である。
平成23年度未使用額(残額) 171925円これは主に謝金などの人件費に予定していた金額を使用しなかったものによる。次年度の研究費はデータ整理などの謝金、成果発表のための旅費などに使用する予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件)
精神科治療学
巻: 26 ページ: 1457-1463
International Psychogeriatrics
巻: 23 ページ: 764-771.
Psychogeriatrics
巻: 11 ページ: 46-53.
巻: 11 ページ: 235-241
Dement Geriatr Cogn Disord
巻: 32 ページ: 379-386.
老年精神医学雑誌
巻: 22 ページ: S65-71
認知症ケア学会誌
巻: 10 ページ: 137-142