情動に関連した認知機能を多角的に解明するため、探索眼球運動および大脳皮質の局所脳血流変動を同時に観測することにより、情動関連探索課題が眼球運動および脳血流変動に及ぼす影響について実験・解析を行なうことを目的とした。 十分なインフォームドコンセントを得られた被験者はアイマーク・レコーダ(EMR)および近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を装着し課題を行った。NIRSによるoxy-Hb濃度測定については、44チャンネルNIRS装置(日立メディコ社ETG-4000)を用いて、血流の変化を最も敏感に反映するとされるoxy-Hb濃度変化量を前頭部及び両側側頭部にて測定した。NIRSによる脳血流変動および部位特異性は未だ不明な点が多く、さらに多くの非特異的要素(アーチファクト)が多く見られ、それを出来る限り除外するために、一連の課題を交互に5回施行し、加算平均したものを分析対象データとした。眼球運動測定については、アイマーク・レコーダ (nac社EMR-9)を使用した。なお、先行研究に倣い、注視停留点は、視角1°以上で停留時間100 msec以上とした。また、瞬きの影響を考慮して、本研究では、500 cm/sec以上の眼球の動きおよびスクリーン外の注視点は削除した。総移動距離及び停留点総数を眼球運動の解析要素とした。 当初の計画通り、久留米大学病院精神神経科を受診している外来患者で、DSM-IVにより統合失調症と診断された患者および健常者、各20名を対象に上記の実験を行うことができた。 今後、健常者群と統合失調症患者群との探索眼球運動および脳血流変動の結果を詳細に比較・分析し、また、統合失調症の症状と各生理学的指標との関連についても、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて検討していく。さらに、分析結果をまとめた上、国内外の関連ある学術雑誌に公表していく予定である。
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